今回のDJI Mini 3は、半年前の2022年5月20日に発売されたMini 3 Proの廉価版として、同レベルの高性能機能を多数搭載しながらコストダウンし、初心者でも手に入れやすく幅広いユーザーに使ってもらおうというメーカーの戦略がうかがえる。
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Mini3とMini3 Proの共通点
今からドローンを始める初心者だけでなく、サブ機としてMini 2を所持している人にとっては買い替え機として「Mini 3か、Mini 3 Proか」の選択に迷っている人は少なくないだろう。そこでまず、Mini 3とMini 3 Pro の共通点を確認してみる。
Mini 3とMini 3 Pro の共通点
- 機体の重量:249g
- 縦向き撮影や4KHDR動画を撮影
- クイックショット機能
- 広角/180°/スフィア撮影も対応
- バッテリー ※互換性あり
- RC送信機 ※互換性あり
- カメラレンズ&NDフィルター ※互換性あり
機体
Mini 3の機体はMini 3 Proと同じく249g未満、一見するとビジュアルもサイズ感もほとんど違いがない。
カメラ
カメラ機能も、Mini 3 Proから導入された縦向き撮影をはじめ4KHDR動画を撮影、クイックショット機能を搭載。初心者でもクオリティの高い撮影ができ、SNS投稿に活用できる仕様は同じだ。また、広角・180°・スフィア撮影とこだわった撮影ができる点もMini3の遺伝子を引き継いでいる。
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プロポ
プロポ(送信機)は、Mini 3 Proと全く同じで、RC-N1(スマホ取付け型)とDJI RC(モニター一体型)の2タイプ。Mini 2やAir 2Sの送信機とも互換性があるため、送信機無しで購入できコストカットするという選択もある。
バッテリー
バッテリーもMini 3 Proと互換性があり、インテリジェント フライトバッテリーと、インテリジェント フライトバッテリー Plusの使用が可能。Mini 3 Proと両党使いすることもできる。
NDフィルター
Mavic 3の廉価版Mavic 3 Classicはカメラレンズが異なるため、NDフィルターを併用できないというデメリットがあったことは記憶に新しい。いっぽうMini 3 ProとMini 3ではカメラレンズも同じ仕様のため、NDフィルターも互換性があり、Mini 3 Proの備品を使いまわすことができるのは有り難い。
どこが違う?Mini 3とMini 3 Pro比較
このようにMini 3とMini 3 Proの共通点や互換性がかなりあることがわかった。ではどこが異なるのか?
機体
まず機体をよく見てみると、Mini 3 Proにだけ前方障害物検知センサーのすぐ後部に後方障害物検知センサーが付いていることがわかる。また、Mini 3だけ前方のプロペラに脚のようなランディングギア(アンテナ内蔵)が付いていることがわかる。
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DJI Mini 3 | DJI Mini 3 Pro | |
重量 | 249g | 249g |
サイズ | 折りたたんだ状態:148×90×62mm | 折りたたんだ状態:145×90×62mm |
展開時(プロペラあり):251×362×72mm(長さ×幅×高さ) | 展開時(プロペラあり):251×362×70mm(長さ×幅×高さ) | |
最大上昇速度 | 5m/s | 5m/s |
最大下降速度 | 3.5m/s | 5m/s |
最大飛行速度 | 16m/s | 16m/s |
最大飛行時間 | 38分(インテリジェント フライトバッテリー使用時) | 34分(インテリジェント フライトバッテリー使用時) |
51分(インテリジェント フライトバッテリー Plus 使用時) | 47分(インテリジェント フライトバッテリー Plus使用時) | |
最大ホバリング時間 | 33分(インテリジェント フライトバッテリー使用時) | 30分(インテリジェント フライトバッテリー使用時) |
44分(インテリジェント フライトバッテリーPlus 使用時) | 40分(インテリジェント フライトバッテリーPlus使用時) | |
最大風圧抵抗 | 10.7m/s(スケール 5) | 10.7m/s(スケール 5) |
動作環境温度 | -10℃~40℃ | -10℃~40℃ |
ホバリング精度範囲 | 垂直: | 垂直: |
±0.1m(ビジョンポジショニング使用時) | ±0.1m(ビジョンポジショニング使用時) | |
±0.5m(GNSSポジショニング使用時)水平: | ±0.5m(GNSSポジショニング使用時) | |
±0.3m(ビジョンポジショニング使用時) | ||
±1.5m(GNSSポジショニング使用時) | ||
水平: | 水平: | |
±0.3m(ビジョンポジショニング使用時) | ||
±0.5m(高精度ポジショニングシステム使用時) | ||
内部ストレージ | なし | なし |
スペック表で比較すると、飛行・ホバリング時間が2~3分長いようだ。Mini 3の方が、機能が省略されている分、省エネになるのかもしれない。
センサー
DJI Mini 3 | DJI Mini 3 Pro | |
前方 | なし | 高精度測定範囲:0.39〜25m |
有効検知速度:飛行速度<10.5m/s | ||
FOV:水平106°、垂直90° | ||
後方 | なし | 高精度測定範囲:0.36~23.4m |
有効検知速度:飛行速度<8m/s | ||
FOV:水平58°、垂直73° | ||
下方 | 高精度ホバリング範囲:0.5~10m | 高精度測定範囲:0.15~9m |
高精度ホバリング範囲:0.5~12m | ||
ビジョンセンサー ホバリング範囲:0.5~30m | ||
有効検知速度:飛行速度<3m/s | ||
FOV:前方/後方:104.8°、左/右:87.6° |
どうやらMini 3とMini 3 Proの明らかな違いはセンサーにあるようだ。つまり障害物検知機能を重視するかしないかで、Mini 3とMini 3 Proのどちらを選択するかが決まるといっても過言ではない。
Mini 3 Proは赤外線検知システムと前方・後方・下方のデュアルビジョンセンサーを搭載し、安全操縦をバックアップする機能が充実している機体として評価が高い。
前方のビジュアルセンサーの見た目の違いは一目瞭然。Mini 3は切れ長K-POP系、Mini 3 Proはぱっちり瞳のジャニーズ系という感じで(笑)、Mini 3 Proのみ障害物を感知するビジュアルセンサーが付いている。
一方Mini 3は、赤外線検知システムは組み込まれているものの、デュアルビジョンセンサーは下方のみ搭載。
また、Mini 3 Proは機体の飛行経路上にいる物体をリアルタイムで検知する「APAS 4.0」システムを搭載することで、複雑な環境でも障害物を回避できる点も特長の一つだったが、この機能もMini 3には存在しない。
Mini 3は2つの小さな赤外線検知センサーの間に1つの下方ビジョンセンサー。Mini 3 Proは2つの大きな赤外線検知センサーの間に2つの下方ビジョンセンサーが搭載されている。
下方のビジョンセンサーは障害物の検知だけでなく、低空時では床面の動きから機体の位置も検知し、さらに複眼になることで、より正確に位置情報も検知できるため、Mini 3 Proの方が安定しているだろう。
実際にMini3とMini3 Proのホバリングを比べてみた
以上のように、スペック上ではセンサー機能がカットされホバリング精度が若干劣ることになるMini 3。だが実際に、風が吹く海辺でMini 3 Proと並べて飛ばしてみたが、多少の風速では、ホバリングの違いは視覚的にはほとんどわからなかった。
屋内など狭くて衝突リスクのある環境では精度の高いセンサーが搭載されていた方が、安心・安全だが、海山など飛行空域に余裕がある環境で飛ばす場合や、ドローンの操縦に慣れている人は、赤外線検知システムと下方デュアルビジョンセンサーが搭載されているMini 3でも充分だろう。
カメラ
DJI Mini 3 | DJI Mini 3 Pro | |
イメージセンサー | 1/1.3インチ CMOS | 1/1.3インチ CMOS |
有効画素数:12MP | 有効画素数:48MP | |
レンズ | FOV:82.1° | FOV:82.1° |
焦点距離:24mm(35mm判換算) | 焦点距離:24mm(35mm判換算) | |
絞り:f/1.7 | 絞り:f/1.7 | |
フォーカス:1m~∞ | フォーカス範囲:1m~∞ | |
ISO感度 | 動画:100~3200 | 動画:100~6400 |
写真:100~3200 | 静止画:100~6400 | |
シャッター速度 | 電子シャッター:2~1/8000秒 | 電子シャッター:2~1/8000秒 |
最大静止画サイズ | 4000×3000 | 8064×6048(48MP) |
写真フォーマット | JPEG/DNG (RAW) | JPEG/DNG (RAW) |
最大動画解像度 | 4K:3840×2160@30fps | 4K:3840×2160@60fps |
動画フォーマット | MP4 (H.264) | MP4/MOV (H.264/H.265) |
最大動画ビットレート | 100Mbps | 150Mbps |
デジタルズーム | 4K:2倍 | 4K:2倍 |
2.7K:3倍 | 2.7K:3倍 | |
FHD:4倍 | FHD:4倍 | |
クイックショット モード | ドローニー、ヘリックス、ロケット、サークル、ブーメラン | ドローニー、ヘリックス、ロケット、サークル、ブーメラン、アステロイド |
カラープロファイル | ノーマル | ノーマル |
D-Cinelike |
カメラについては、Mini 3は画素数や解像度など基本的なスペックが下がってしまうが、WEBサイトやSNSで公開したり、スマホで保存・閲覧したりするには全く問題ない。
あえていうなら日の出&日没、花火や星空を撮る場合はISO感度の振り幅が倍になるMini 3 Proを、日中など明るい環境だけで撮るならMini 3をおすすめしたい。
映像伝送システム | ||
---|---|---|
DJI Mini 3 | DJI Mini 3 Pro | |
映像伝送システム | DJI O2 | DJI O3 |
ライブビュー品質 | 720p/30fps | 1080p/30fps |
最大伝送距離 | 6 km | 8 km |
最低遅延 | 約200 ms | 約120 ms |
それからMini 3は映像伝送システムも多少劣るものの、実際に海辺を動画撮影してもMini 3 Proとの違いがわからなかった。
今ここにしかない「ワクワク」をとらえるMini 3
最後に、今回のレポでMini 3を操縦してみて「ワクワク」したことは、やはり縦型カメラ機能だった。
いかに「美しい絶景を撮る」よりも「日常の発見」や「大切な仲間(友人、家族、そして愛犬も)と一緒に過ごした時間を記録する」ことにドローンの魅力を感じる私にとって、縦長サイズでの空撮は相当なインパクトと、日常で欠かせないスマホで見た時のしっくり感があった。
縦長サイズでは、海、陸、山、空と層のようなコントラストが織りなされ、鮮やかなシーンが撮れてテンション上がる。
画角を捉えながらスティックを精密に操作しつつカメラを動かす…そんな鍛錬された操縦技術がなくてもそれなりに印象的な写真や動画が撮れる。この手軽さが、ドローンと私たちの距離をぎゅっと縮めてくれて、今ここにしかない時間を記録することができるだろう。
価格 | ||
---|---|---|
DJI Mini 3 | DJI Mini 3 Pro | |
機体単体 | 税込65,120円 | 税込92,400円 |
DJI RC-N1付属 | 税込79,750円 | 税込106,700円 |
DJI RC付属 | 税込97,570円 | 税込119,900円 |
DJIのドローンは、コンパクトに折り畳みショルダー型で持ち運びに便利なMavicシリーズもMavic 3からサイズアップしたため、プライベートな旅行や遠出で気軽に飛ばすことが難しくなった。そんなとき、コンパクトドローンシリーズDJI Miniシリーズは重宝する。
機体のコストは、Mini 3 ProよりMini 3が3万円程安い。たかが3万、されど3万。プライベートで気軽に飛ばせるサブ機として廉価版のMini 3を活用しつつ、そのうちまたリースされるであろう最新機種のドローンに乗り換えていくのも良策といえる。