衝撃の小型高性能ドローンDJI Mavic 3シリーズがデビューして1年、これまでよりもさらにコストパフォーマンスが高い「Mavic 3 Classic」がデビューしました。これで空撮用のMavic 3は標準タイプ、空撮用ハイエンドの「Cine」とあわせて3種、産業用の「E」(測量用)、「T」(点検・防災等)、「M」(農業用)と合わせれば全6種のMavic 3が出揃ったことになります。そこで今回は、Mavic 3 Classicを他の空撮用Mavic 3とも比較しながらレビューしたいと思います。
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望遠カメラが省かれたMavic 3 Classic
Mavic 3 ClassicはこれまでのMavic 3(標準)に対して「望遠カメラ(162mmの28倍ハイブリットズーム)」を取り除いたものになります。同じ送信機「RC-N1」付属のパッケージで比較すると、標準が287,760円なのに対し、Classicは229,240円と58,520円も安くなっているところが魅力的です。
また、発表と同時にMavic 3用アップデートで暗所をキレイに撮影できる「ナイトショット」撮影モードや、一定の方向に動きを自動継続する「クルーズ制御」、さらに12月10日のアップデートではウェイポイント飛行機能も追加されました(Mavic 3シリーズ共通アップデート)。これらの高機能や4/3インチセンサー搭載の高画質カメラ等を活用するベース機体として「Classic」という新しい選択肢ができたことになります。
基本性能が優れたMavic 3シリーズの使用感
多用途に機種を展開しているMavic 3ですが、その理由はベースとなる機体の基本性能が高いということでしょう。1年間 Mavic 3を使用してきた筆者の個人的な感想をお伝えすると…
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高画質&コンパクト
4/3インチセンサー搭載のHasselblad L2D-20cカメラは奥行き感のある色調豊かな映像を撮影することができます(Phantom 4 ProやMavic 2 Proは1インチセンサー)。4/3インチセンサー搭載のカメラは一般的なカメラだと「マイクロフォーサーズ」という小型ミラーレス一眼と同等、これまでのDJI製ドローンであれば対角605mmサイズのINSPIRE 2(Mavic 3は対角347.5mm)とセンサーサイズは同等です。
超安定飛行&強電波
Mavic 3を初めて操縦して驚いたのはその飛行安定性です。GPS等のGNSSは30個以上取得することができます(測位衛星の取得個数が多いほど測位精度は高い)。加えて、好みが分かれるところですが、カーブ飛行時にラダー(機体の回転)を入れるとエルロン(横移動)も自動的に入りカーブ時の機体の横滑りを抑制してくれます。そのため、思い描いた軌道に機体を持っていくことが容易な印象です。特に、オプションの「DJI RC」や「DJI RC Pro」というモニター一体型プロポの操作性がよく、スティックの入力をダイレクトに機体の動きに反映してくれるイメージで操縦することができるので、手放せなくなりました。
また、O3+の映像伝送はとても強力で、多少の長距離や障害物があるような環境でも安定した電波伝送を実現しています。空撮をする際に、映像伝送が少しでも固まってしまうとキメた画角が少しずれることもありストレスだったのですが、Mavic 3を使うようになってそのような場面はほとんどなくなりました。
長時間飛行
長時間飛行(カタログ値で46分)ができるということがこんなに撮影が楽なのか!と、Mavic 3で空撮をするようになって初めて知ることとなりました。例えば、コロナ禍で増えた「サプライズ花火大会」の撮影時、花火の打ち上げ時間は10~15分なのですが、高高度での撮影が必要な花火大会の空撮はバッテリーを通常以上に消費します(高高度上空を含んだ上下移動や開演までの空中待機など)。カタログ値30分前後のPhantom 4 ProやMavic 2 Proではギリギリ、または撮りきることができません。
これがMavic 3なら余裕でバッテリー1本で撮れてしまいます。この1年、なかなか来ない乗り物の被写体をホバリングしながら待機したり、長時間(30分強)のタイムラプス撮影をしたりと、いろいろな場面で長時間飛行性能に助けられました。
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Mavic 3 Classicの新機能
Mavic 3 Classicの発表とともに公開された新機能についてもチェックしたいと思います。
ナイトショット撮影
夜景など暗い環境でも美しく動画撮影ができるモードです。通常の撮影と比較してみます。
通常撮影(左)とナイトショット(右)を比較すると、ナイトショットのほうが暗いところは暗く、明るいところは明るいというメリハリのある画面になっています。特に、通常撮影時のイルミネーションに照らされた樹木の葉周辺が明るくなってしまっているのに対し、ナイトショットは樹木の葉にも明暗があります。また、わずかですが、ナイトショット撮影モードにすると画面がクロップ(切り抜き)されるようです。
次に、わかりやすく、編集ソフト上で露光をオーバー気味に色補正して比較したいと思います。
両方の画像ともに編集ソフト上で露光を同じレベル上げたものですが、明らかにナイトショットの画面のほうが色調が豊かでメリハリがあります。
おそらくですが、ナイトショット撮影モードは、色表現の幅を夜景に適した暗がりよりに調整して(明るい部分を捨てて暗い部分の色数を増やしている)撮影することができるようです。これは夜景撮影で大きな武器になりそうです。
クルーズ制御
クルーズ制御は、車のクルーズ走行機能のように、一定のスティックの入力を自動継続してくれる機能です。例えば、エルロン右側に適正入力した状態でクルーズボタンを押すと、その入力を自動的に継続してくれます。パイロットはクルーズ制御に飛行を任せてカメラ操作に専念することができるので、カメラ操作に集中したいときなどに活用できそうです。ただし、周囲の安全には十分配慮してクルーズ制御をご利用ください。
ウェイポイント
ウェイポイントは、地図上に打刻した座標情報の点と点をつないだルートを飛行する自動航行方法のことです。予め地図上にウェイポイント(点)を打って飛行計画を作成するパターンと、実際に飛行させて通った場所にウェイポイントを打つパターンの2つの方法を選ぶことができます。もちろん、ウェイポイントごとに高度や速度、機体の向きやジンバルの角度なども調整可能です。
実際にウェイポイントを設定して飛行させてみると、飛行ルートは点と点をつないだ直線ではなくスムーズなラインとなり、飛行しながら撮影した映像データはとてもなめらかなものでした。昼間と夜間、春と冬など、時間を変えて同じ場所を同じように撮影する表現に使ってみたくなります。もちろん、自動航行中に手動操作を混ぜたり、途中で自動航行を停止させることもできますので、事前に安全を十分に配慮して飛行させてください。
ウェイポイント飛行で実際に撮影した映像。ジンバルの動きもとてもなめらかだ(カメラ設定:オート、4k30p)
まとめ:自分にあったMavic 3シリーズの選び方
結局、Mavic 3シリーズのどれを買うべきか?…予算もさることながら、望遠カメラが必要かどうか、ProRes撮影が必要かどうか、この2点が岐路となってきます。
果たして望遠カメラを使うのか?というところですが、撮影のバリエーションとして162mmのカメラを使うかというと、あまりその必要はないでしょう。望遠カメラはセンサーサイズも1/2インチなので画質もあまりよくはありません。
ただ、筆者は遠くから近づいてくる乗り物が被写体となる場合や、飛んで来るドローンの様子(実証実験等)を撮影するなどの機会があります。そのようなとき、162mm(標準のカメラから比較すると7倍望遠)で遠くの被写体を探し、近づいてくるのを確認してメインカメラで撮影をスタートする…といった使い方をよくしています。このような使い方が想定される方は標準のMavic 3を購入したほうがよいでしょう(特殊かもしれません…)。
また、撮影業務などでProRes形式の動画撮影をされる方はMavic 3 Cine一択ですね。本体の1TB SSDとProRes撮影機能で高画質な撮影記録ができます。
上記のような使い方をしない方は、Mavic 3 Classicが最高のパフォーマンスを発揮します。ナイトショットやクルーズ制御、ウェイポイントといった最新の機能は、ただでさえ基本性能が高いMavic 3を最高峰の小型空撮カメラにしたと言ってもよいでしょう。Classicの登場で手が届きやすくなった Mavic 3をぜひお試しください。