株式会社トルビズオンは、有限会社徳吉薬局、株式会社NEXT MOTION、エアロセンス株式会社とともに、鳥取県・鳥取市の協力を得て、2022年12月1日、オンライン服薬指導およびe-VTOL型無人航空機(パワードリフト機)による処方医薬品の混載便輸送実験を実施した。2022年12月5日に施行される改正航空法による第三者上空飛行の解禁をにらみ、今後は第1回で飛行したマルチコプターと、今回飛行したe-VTOLとの連携も視野に入れ、長距離飛行配送と短距離飛行配送の組み合わせによる中山間地へのサービス提供ができるよう検討するとしている。
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実証実験概要
- 実施日時:2022年12月1日(木)7:30~10:00ごろ
- 搬送物資:処方箋医薬品、食品
- 実験内容:複数患者に対するオンライン服薬指導および処方箋医薬品の混載便ドローン輸送
- 実施体制:
主催:徳吉薬局・NEXT MOTION
協力:鳥取県・鳥取市・鳥取市立江山学園
プロジェクトアドバイザリー:トルビズオン
機体・運航管理:エアロセンス
撮影協力:DPCA(一般社団法人ドローン撮影クリエイターズ協会) - 使用機体:エアロセンス製 「e-VTOL型無人航空機 AS-VT01」
- 飛行ルート:
- A地点 鳥取市千代川河川敷(古市スポーツ広場)~B地点 トリノス神戸(旧神戸小学校)(約11Km、約13分)
- B地点 トリノス神戸(旧神戸小学校)~C地点 鳥取市立江山学園(約5.3Km、約8分)
実証実験の内容
同実証実験は、一般財団法人環境優良車普及機構の過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業および、鳥取県デジタルグリーン物流推進実証モデル支援により実施。2022年10月19日に実施した1回目の実証実験では、災害を想定した医薬品等の物資輸送をマルチコプターにて実施したが、今回は平常時における中山間地域の患者へ処方医薬品の配送とオンライン服薬指導、さらに帰り便にてピザの配送を全行程e-VTOLにて実施した。
3名の患者は市内の病院で診療を受けた後、徳吉薬局市役所前にて処方箋の受付と支払いを行い、自宅近くにあるトリノス神戸(旧神戸小学校)にて処方医薬品の受取りと薬剤師からの服薬指導をオンラインで受けた。
その後、物流の課題でもある帰り便には復路の通過地点にある江山学園まで、神戸地域にある手作りピザ屋「ボンズ・キルン」のピザを宅配し無事に全行程を配送完了した。
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また、今回はトルビズオンがサービス提供する「ソラシェア」により、飛行ルート下の土地所有者に対し、同実証実験だけではなく、今後のドローン飛行の合意を取得し実施された。この合意形成には、地域住民の協力や無人航空機への理解など、地域連携が必要となり、今後のドローン物流社会には必要な飛行ルートデザインの基盤として同実証実験に組み込まれた。
オンライン服薬指導は高齢者にはネット環境やデバイス操作が困難などの課題があるため、トリノス神戸(廃校となった旧神戸小学校)を管理するNEXT MOTIONが旧神戸小学校の教室をオンライン服薬指導ができるよう環境整備した。患者をオンライン服薬指導を受けられる教室へと案内し、薬剤師からの服薬指導を行った。
さらに、鳥取市立江山学園の小中一貫特別の教科等「江山かがやき科」において、生徒による地域課題の探究プロジェクトとして、過疎地の医療を考える「遠隔医療チーム」と廃校の利用を考える「廃校活用チーム」の生徒も同実証実験に参加し、産官学で地域課題解決へ連携した。
同実証実験で脱炭素はもちろんのこと、過疎地へのドローン配送や遠隔医療、廃校施設再利用、ドローン飛行ルートの構築など事業化には必須な具体的な課題があり、事業化させるための次なる計画を展開する予定としている。
今後のビジョン
今後、トルビズオンはドローン配送の事業化に向けて更なる実証実験を進め、人員体制、定期便、天候課題、機体選定など具体的にサービス提供できるよう課題解決をしていくとしている。航空法のレベル4が解禁され、国家資格である一等無人航空機操縦士の資格を所持するパイロットの確保も急ぎ、目視監視員を減らすことによるコスト削減や、携帯電話通信網のLTE通信で飛行制御できる機体の選定、遠隔操縦ができる管制システムの設置など安全を考慮していくという。
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また、鳥取県全域を網羅する「空の道」を構築予定とし、東西を結ぶことはもちろんのこと、鳥取県東部にある「千代川」、鳥取県中部にある「天神川」、鳥取県西部にある「日野川」を軸としてその支流に存在する集落へのドローン配送が実現できるよう、鳥取県と県民の協力を得ながら進めていく。第1回で飛行したマルチコプターと今回飛行したe-VTOLとの連携も視野に入れ、長距離飛行配送と短距離飛行配送の組み合わせによる中山間地へのサービス提供ができるよう検討するという。
遠隔診療が進展すれば、同実証実験の医薬品ドローン配送とオンライン服薬指導との一気通貫のサービス提供が可能となるため、患者が気軽に受診や指導が受けることができる通信環境の整備も行っていくとしている。
関係者からのコメント
株式会社トルビズオン代表取締役 増本衞氏
ドローンが第三者上空を飛行させる場合において、国が重視しているのが「空路のリスクアセスメント」です。運航者は安全確保のためのルールに従う必要があります。また同時に自治体や地域との合意やマナーをまもったルートのデザインが求められます。そのためにドローン空路を視覚化して、地域住民が安心して飛行を見守れるプラットホームが必要だと考えました。それがソラシェアです。今回、運行者が地域のニーズをしっかりと汲み取り、住民が求めるニーズに従い、「空の道」を築き上げたというのは非常に意義の深いことだと感じています。
有限会社徳吉薬局代表取締役社長 徳吉淳一氏
今回の実証実験では10kmを超える距離の配送が成功したことをまずは素直に喜びたいと思います。そして今後は医薬品配送やドローンに関連する法改正等を視野に、地域の住民の方々のご理解・ご協力を頂きながら、離発着場所や飛行ルートの確立、配送体制作り等を行い、中山間地域への定期的な運行に向けて積極的に取り組んでいきたいと考えています。
株式会社NEXT MOTION代表取締役社長 西原徹氏
中山間地域の多くの課題はもはや社会問題です。ドローンによる物品の配送は、国内の多くの企業が課題解決に取り組んでいます。医薬品の配送こそ課題解決に直結すると感じ、徳吉薬局さんと一緒にプロジェクトを立ち上げました。既に多くの分野で活躍をしているドローンですが、物流に関しては2022年12月5日に施行される改正航空法により国家資格制度が始まったり、レベル4飛行が解禁されたりと、ドローン配送がサービス化されるのはすぐそこまで来ています。
そのための実証実験であり、「空の道」でもあります。私たちは鳥取にお住まいの皆様と一緒に安全な「空の道」を作り上げ、ドローンが飛び交う新しい時代を築いていきたいと思っています。
エアロセンス株式会社取締役 営業/アライアンス/渉外担当 嶋田悟氏
今回の実証実験では、河川上空から山間部谷合を抜けるおよそ12kmを10分程度でレベル3相当の飛行による医薬品および食料品配送を実現しました。2回にわたる実証実験の成功により、子供から大人まで地域に住む人々の社会受容の形成、ならびに地域のドローン配送サービス事業化を目指す方々にとって後押しとなる事を願っています。
鳥取市立江山学園副校長 浅井美和氏
江山学園の小中一貫特別の教科等「江山かがやき科」では、「地域の課題をみつけ、未来のふるさとを豊かにするためにできることは何だろうか」ということを、生徒達は探究しています。8年生の中に、ドローンを活用して何かできないかと考えた生徒達がいました。
自分たちで考えたことが今回のプロジェクトで、実現するのを目の前で見ることができ、大変感激したことと思います。子ども達の夢、地域の夢を、叶えることができるドローンの配送プロジェクトに、今回、私も参加することができ、どきどきわくわく、楽しい時を過ごすことができました。
鳥取県通商物流課課長 清水明史氏
県では、地域の暮らしや産業の発展に向けて、物流分野におけるデジタル化や自動化に関する県内企業の取組を支援しています。このたび、これら取組の一環として、ドローンを活用した複数人への処方箋薬の配送とオンライン服薬指導の実証実験が成功したことは、ドローン配送の実用化に向けた大きな一歩であり、今後の更なるステップアップを期待しています。
鳥取市経済観光部部長 大野正美氏
今回の実証ルートのように、障害物の少ない河川上空で、医薬品配送などのドローン物流の社会実装を促進することで、地域課題の解決や地域活性化を図ることが期待されます。本市中山間地域では河川沿いに集落が点在している地域が多く見られることから、河川上をドローン航路として、物流のスマート化・デジタル化を進めていくことは地域住民の安全・安心な暮らしの確保に効果的と考えています。
搬送する貨物量が小ロットとなりがちな過疎地域等においては、既存物流からドローン物流に転換し、グリーン電力をエネルギー源にすることで、輸送に伴うCO2排出量の大幅削減が期待されます。2050年ゼロカーボンシティを実現する観点でも、過疎地域等におけるドローン物流の取組に期待しています。