大型のMatrice 300 RTKから小型のMavic 3 Enterpriseシリーズまで最新産業用ドローンラインナップが揃った大手ドローンメーカーのDJI。
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用途に応じた産業用ドローンのラインナップ構成
事例発表会は、DJI JAPAN代表・呉韜(ゴ・トウ)氏による日本国内の制度変更についてのプレゼンテーションと、同社木田氏による産業用ドローンの紹介からスタート。
呉氏は「新制度における飛行形態の分類のうち、DJIユーザーはカテゴリⅠ~カテゴリIIの運用が多くなると思われる。カテゴリⅠは飛行の許可・承認は必要ないのでDJIユーザーに影響を与えるのはカテゴリII飛行。現制度と併用されるので飛行の許可・承認を受けれは飛行することもできるが、機体認証(第二種)と操縦ライセンス(二等)を取得することで一部許可・承認が不要になる。ユーザービリティの向上につながるのでDJIは型式認証を進めていきたい」と語った。
また、木田氏はDJIの産業用ドローンのラインナップを紹介。ペイロードを目的に応じて変更できるMatrice 300 RTK、赤外線+光学+ズームカメラで防水仕様のMatrice 30T、小型軽量で長時間飛行を実現したMavic 3 Enterpriseシリーズ。DJIの産業用ドローンシリーズは最新の機体フォーマットで大型から小型まで揃っている。
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また、SfM(撮影対象を複数枚写真撮影して撮影対象の形状を3次元に復元する)ソフト「DJI Terra」も紹介され、3次元データ活用の有効性が示された。
無力感からのスタートRED GOBLINS ~災害・防災分野のドローン活用~
1つ目の産業用ドローン活用事例は、2017年に災害初動期に速やかな情報収集を目的に発足した、豊橋市ドローン飛行隊「RED GOBLINS」。創設メンバーのひとりが2015年鬼怒川の堤防決壊災害を目の当たりにしたことが発足のきっかけになったという。特に、地上から見た状況と後に知った空撮による上空からの情報に状況把握の大きな開きがあり、ドローンの有効性を感じたそうだ。そして2017年8月には市内で竜巻被害があり、状況の把握に当時協定を結んでいた民間企業に調査を依頼したものの、その無力感から自らドローンを運用するチームを発足させるに至った。
発足当初は1機だったドローンも、最近では3班3機体制となっており、機体もPhantom 4からInspire 2、Matrice 210 V2と進化していった。現在では赤外線+32倍ズーム可視光カメラを搭載しつつもコンパクトなMavic 2 Enterprise Advancedを活用しているが、先月リリースされた後継機体Mavic 3Tに興味を持っているとのこと。Mavic 2 Enterprise Advancedよりも長時間飛行や電波強度の安定性を有し、56倍ズームにも対応したコンパクトな最新機体は現状よりも確実に安全かつ質の高い目的達成を実現するはずだ。
大規模災害を想定して組織された「RED GOBLINS」は市役所のさまざまな部局から31名が集う。「大規模災害時こそ市や組織全体から力を結集する必要がある」との考えからだ。市のさまざまな部局でドローンを活用してほしいとの願いもある。
その後、初動期の情報共有の迅速化のため、クラウドのアップロードした動画をURLのみで即座に共有できる仕組みを導入したり、公開されている2次元・3次元データ(国土交通省の3D都市データ「PLATEAU」等)なども利用しながらデータ活用のテスト・模索が始まる。重要なのは、スピード感を持って「お金を掛けずにできることをやってみる」ということだそう。簡易的なデータ処理手法が確立されれば、迅速な初動対応やさらなる業務活用につなげることができる。
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その成果が現れたのが2022年の台風15号の影響による大量の流木等の漂着だ。漂着物調査のため太平洋沿岸約14kmをドローンで自動航行させ約1,300枚の写真撮影による簡易オルソ画像を作成、市民からの通報で動いてから2日後には市長に報告をすることができた。これは人が調査・報告するよりも遥かに短時間だ。
現在では、応急・復旧期での情報活用手法についても模索を始めており、道路啓開(震災時に道路上の瓦礫や放置車両を撤去し緊急車両の通行を確保する)や罹災証明発行の迅速化ができないか挑戦中とのこと。RED GOBLINSの機動力の高いドローン取得データ活用は、他地域の防災・災害対策でも参考になりそうだ。
調査・測量分野のドローン活用
2つ目の事例紹介は、株式会社安田測量の安田氏による測量現場における産業用ドローン活用の有効性だ。超高画質フルサイズセンサーカメラ「Zenmuse P1」やLiDAR+RGBカメラ+IMU+ジンバルの統合ユニット「Zenmuse L1」を活用した事例が紹介された。
ICTを活用して生産性向上を図るi-Constructionでは、ドローン等による3次元測量や検査の省力化が示されている。これまでの測量手法である地上からトータルステーションを利用した測量では複数人で現地調査を行い、その情報をオフィスに持ち帰ってCAD等を使った平面図、横断図、断面図等の作成が必要になる。ドローンを活用すれば手軽に広範囲の3次元計測が可能で、DJI Terra等のSfMソフトで簡単に3次元データを作成できる。さらにプロジェクトファイルを出力することで、業者間でデータを共有できるのも便利なところだという。
フルサイズセンサーカメラ「Zenmuse P1」の圧倒的な効率化
写真測量において、高解像度カメラは効率化に大きく貢献することができる。Matrice 300 RTKに搭載可能なZenmuse P1はフルサイズセンサーを搭載した高解像度カメラ。同じ地上解像度の計測であれば、Phantom 4 Proの1インチセンサーカメラと比較して飛行高度は約2倍保つことができるために安全に飛行ができ、高解像度カメラのため写真枚数も約半分でよい。検証では、その結果として飛行時間は81%減となり、Matrice 300 RTKの長時間飛行性能と相まって消費バッテリーは2セットで済むことがわかった。
もちろん、計測精度も高レベルに保たれており、現場での設置作業が大きな負担となる標定点の設置をしなくても5cm精度(出来形計測相当)を確保することが可能だ。
これらの効率性・精度を活用して約30haの河川工事現場の事例(地上解像度:約1.5cm/pixel)が紹介されたが、Phantom 4 PROでも数時間はかかる面積の3次元測量をMatrice 300 RTK+Zenmuse P1の組み合わせでは約30分で計測が終了したとのこと。精度においても5cm未満となっており、P1の圧倒的な効率性と高精度がわかる事例だ。
コンパクトなボディにLiDAR+RGBカメラ+IMUを搭載したZenmuse L1
Zenmuse L1は、コンパクトなボディにLiDAR+RGBカメラ+IMUを統合したレーザー測量用ペイロード。一体型で運用が楽なだけでなく、ボタンひとつでカラー点群をリアルタイム生成することができたり、立木の状態から地表面までも高密度計測できる「3リターン」計測に対応したりと高性能なパッケージとなっている。その上、Matrice 300 RTKの長時間飛行性能を組み合わせることで一度に200haの計測が可能というのだからドローンにLiDARを搭載した計測を始めるなら最適なパッケージと言えよう。
事例紹介では、林道工事現場の計測を例にデータの活用を見ることができた。立木の状態から地表面の高密度計測データ、そしてその地表面データを活用した高精細な等高線の描画や横断図の作成などの基本資料作成はもちろんのこと、3次元設計データを活用した未来予想やそのデータを活用した土量計算までできている。
これまでのドローンを利用したレーザー測量は、大きな機体に大きなLiDAR、大量のバッテリー(重量が重いので飛行時間が短くなる)という装備設備が前提であったが、Matrice 300 RTKとZenmuse L1の組み合わせはその常識を間違いなく変えてしまったようだ。
網羅的な製品ラインナップと教育支援の仕組みがDJIの強み
DJIの産業用ドローンは、ペイロードが変えられる大型機から一体型の小型機まで網羅的にラインナップされている。ユーザーがやりたいことがあるときに、その解決策となる機体を見つけることは容易にできるはずだ。
加えて、教育プログラム「DJI CAMP」では、基本的な飛行や安全に関する「DJIスペシャリスト」から、DJI産業ドローン製品(DJI ENTERPRISE 製品)を現場で取り扱うための基礎的なスキル、一連の流れや操作が習得を目指すDJI JAPANが指定する製品教育( DJI ZENMUZE L1 基礎 オペレータ認定講習、 DJI ZENMUZE P1基礎 オペレータ認定講習が準備中)が用意されているほか、万が一の機体損傷時にはDJI Care Enterprise等のケアプランで(有料サービス)で無償交換もできるのが嬉しいところだ。
産業用ドローンを活用する準備はすぐに揃う。今一度、自社の業務を見直し、効率・安全化のためにドローンの活用を検討してみてはいかがだろうか?