やってきたPhantom 4さっそく実践投入です!
4月1日に全国発売が開始されたDJI Phantom 4。前方障害物検知機能やアクティブトラックといった新機能が付いたとは言え、発表されたスペックを見る限りPhantom 3 Professional(以下、Phantom 3)からカメラまわりの改善点がそれほど多くは無いため(数字上は色収差が56%、魚眼の歪みは36%低減、FHDで1080P動画を120フレーム/秒で撮影可能になった:メーカー発表)、Phantom 3ユーザーは購入を迷っている方も多いかと思います。
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また、新規にPhantomシリーズの購入を検討している方も価格が20%安くなり、Phantom 4よりも26%も安いPhantom3でも充分なのではないか…と思われているのではないでしょうか。
そこで、今回タイミングよく空撮のご依頼をいただいていましたので、Phantom 4をさっそく撮影現場に導入してみました。実際の撮影に利用し、Phantom 3と比較しながらPhantom 4を新規導入する必要があるのか、それともPhantom 3で事足りるのか検証してみたいと思います。当日の天気は曇り時々晴れ、風速は0〜1mほど。検証にあたっては各機とも基本デフォルト設定とし、Phantom 4についてはアクティブトラックの「後方飛行を有効にします」「障害物回避機能を有効にします」にチェックを入れてあります。
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プロジェクトの概要
今回、空撮の現場となったのは大阪府にある霊園、ハピネスパーク交野(交野市)・ハピネスパーク牧野(枚方市)です。西欧風のデザインと徹底したバリアフリー設計が好評で、先日は某有名ビジネスニュースにも紹介されました。
ハピネスパーク交野(左)、 ハピネスパーク牧野(右)
空撮は霊園のプロモーションビデオの制作が目的です。パンフレットを作成しているものの、やはり写真ではお客様に霊園の魅力を伝えきれない…ということで動画制作のお声がけをいただきました。実際に、霊園を訪れたお客様は、パンフレットで見ていた印象よりも大きい、こんなにキレイだと思わなかった、という感想を持たれることが多いようで、空撮映像による霊園の規模感や俯瞰することで見える美しさを伝えられればと思います。
空撮のポイント
ハピネスパークのプロモーションビデオ制作は、移り変わる霊園の表情を捉えるため年間プロジェクトです。昨年秋に基本となる1回目の撮影が終了し、今回は霊園周辺に咲いた桜の撮影がメインです。また、墓石の並びや施設デザインの描写を中心とするため、高高度の空撮映像よりも地上数メートルの映像を多用します。これらの条件にPhantom 4がどれだけ対応できているか、Phantom 3と比べてどれだけ優れているか検証していきたいと思います。
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操作性の検証:低空からの空撮
低空での撮影は被写体までの距離が近いため、ちょっとした飛行のブレやスピードコントロールが映像に大きく影響を与えてしまいます。Phantom 4は10m以下の安定飛行をサポートするビジョンポジショニングカメラや超音波センサーがステレオ化し、安定飛行能力が向上していると思われますので期待ができます。
ステレオ化されたビジョンポジショニングカメラと超音波センサー
ハピネスパーク交野にてPhantom 3および4を地上3mほどにホバリングさせ、カメラアングルは真下に向けてゆっくりと霊園上をフライトさせます。まだ開設されて間もない霊園のため空きが目立ちますが、水平垂直にデザインされた美しさを伝える映像を狙います。
この低高度からの真下映像はスピードのコントロールを遅めに、かつ一定にしないと見づらいものになってしまいます(意図的でないかぎり)。また、霊園が直線的なデザインになっているため、フライトルートが意図せず湾曲するとそれがすぐにバレてしましますので、手動の操作は非常に神経を使います。
直線的なデザインのハピネスパーク交野
前回の撮影時にも収録したのですが、Phantom 3でフライトするとどうしてもちょっとしたスピードの変化やルートのズレが出てしまいます。墓石や植木による凹凸がたくさんあり、その上を斜めに飛行させるためどうしてもPhantom 3の現在地の認識にズレが起きるのではないかと推測しています。
対して、今回フライトさせたPhantom 4の動きはとても滑らか、かつ直線的に動くことができました!特にスピードコントロールは人的な操作誤差を吸収している感覚で操作ができ、一定のスピードでコントロールすることが非常に簡単にできます。直進性も非常に高く、地面の凹凸が激しくてもほぼ真っすぐ飛ばすことができるようです。これは、ステレオ化したポジショニングカメラが地面の凹凸まで把握して機体の位置を調整しているのではないかと思われます。
操作性の検証:ノーズインサークルを手動操作してみる
ドローンによる空撮をやっていると必ずやることになる被写体を中心に添えてまわりに円を書くようにフライトする「ノーズインサークル」。ラダーとエルロンを組み合わせてフライトさせます。最近はインテリジェントフライトの「Point of Interest」を使えばプログラム的にできるものの、飛行場所によっては使えない場合もあるのでやはり自分の操作でできるようになっておきたいところです。
しかし、自分もあまり得意ではなく、特にPhantom3の動き出しから加速するスピード変化と機体を内側に向ける(被写体を画面の中心に常に捉える)操作の強弱のバランスが非常に難しい…。気づくと円が膨らんでいたり、逆に中心側に食い込んでしまったりすることもしばしば。Phantom4ではどうでしょうか。
結論、非常に楽です!先ほどの低空飛行の際と同じく、速度を一定に保つことが簡単にできるので、フライトのはじめに初めにラダーとエルロンのバランスに気をつければ、ほぼ同じ半径で円を描くようにPhantom4がフライトします。これならば非GPS環境下やまわりに障害物があって自動航行に不安が残る環境などでもキレイなノーズインサークルの映像が撮影できそうですよ。
操作性の検証:直進性
操作性検証の最後は直進性を試したいと思います。霊園中央の通路を歩行しているように低空でまっすぐ飛行させ、最後に急上昇する…という一種のサプライズカットを作成します。前回の撮影でPhantom3を使用したときは何度もリテイクしてやっとの思いで作成しました。Phantom4ではどうでしょうか。
なんと、垣根の途切れ目が「障害物」と認識され、前方障害物検知機能によりフライトが強制停止されました!前方の障害物検知カメラは60°の水平視野と54°の垂直視野を持っているとのこと。つまり、良くも悪くも真正面にない物体も障害物として検知してしまうわけですね。
垣根の途切れ目を障害物検知した模様。アラートが3.0Mと表示されている
狭いところを撮影する場合や、上級者で前方の障害物検知がそもそも必要ないという場合は設定でOFFにすることもできるので使い分けが必要になるかと思います。肝心の直進性ですが、今回の撮影のような無風に近い状態で地面が平らな場合、感覚値になってしまいますがPhantom 3とPhantom 4ではさほど代わりは無いようです。ただし、別日程で訪問した海岸で湖風3m前後の中上空140mまで垂直に上昇してから下降させた際には、離陸ポイントから数十cmのところにもどってきた正確性を考えると、横風を受ける環境下では差が出る可能性があります。このあたりは引き続きPhantom4を利用しながら検証していきたいと思います。
アクティブトラックの検証
Phantom 4の新機能で注目なのは、やはり画像認識で自動追尾を行うアクティブトラックではないでしょうか。実用性はどこまであるのか、実際の撮影で検証してみたいと思います。
ハピネスパーク牧野では、敷地が広いためセグウェイを使って園内の見回りやお客様に献花のお届けをします。今回の撮影ではセグウェイで見回りをするスタッフさんを低空から撮影するため、Phantom 4新搭載のアクティブトラックを活用してみます。
地上5mほどにPhanotm4をホバリングさせ、アクティブトラックを設定します。スタッフさんにはセグウェイで秒速1〜1.5m程度で一定速度走行をしてもらい、まずは園内で撮影を試みました。墓石や垣根がひしめく霊園なのでPhantom4 が誤認識しないか…がポイントです。
実際にやってみると、墓石や垣根を誤認識することはありませんでした。しかし、最後にアクティブトラック対象のスタッフさんと同じ色のスーツを着た別のスタッフさんが近づいたところ、一瞬そちらのスタッフさんに引き寄せられてしまいました。しかも、その後、もともと設定していたセグウェイに乗ったスタッフさんを再認識したものの、そのときには既に少し距離が出ていたために急加速し、門に衝突しそうになるというアクシデント!ちょっとヒヤリとさせられました。
角を曲がった1:00〜追尾対象を誤認識・急加速をします
これは恐らくアクティブトラックが追尾対象の色(周辺との色の差)を基準にして追尾しているためと思われます。つまり、いろいろなモノがごちゃごちゃ存在する環境よりも、アクティブトラックの追尾対象と同じ色の動く対象がある環境、または追尾対象の色と周辺の環境の色との差が少ない場合は誤動作しやすい…ということになります。
試しに少し開けた場所(霊園の駐車場)で、先ほど誤認識してしまった同じ色のスーツを着たスタッフさんに再度ご協力いただいて画面内に現れていただいたところ、やはりそのスタッフさんに引っ張られてしまいました。また、追尾対象の移動速度が遅すぎても追いつく⇒一瞬スピードを緩める⇒追いつく…といった不自然な動きをしてしまうようなので注意が必要です。アクティブトラックが動作する再低高度は3m以上ということですが、自然な追尾をするための追尾対象の最低移動速度もあるようです(メーカー発表仕様からは確認できませんでした)。
最後、建物側に立つスーツのスタッフさんに追尾対象が移りました
とは言え、上記条件をクリアできれば一定距離を保ったまま追尾するアクティブトラックはとても便利です。特に、アクティブトラック中でもスロットルで高度をコントロールすることができますので、カメラアングルの操作に集中することができました。
画質を比較する
最後に画質を比較したいと思います。最高画質は4096×2160 (4K)24/25pまたは3840×2160 (4K) 24/25/30pということなので、Phantom4になったからといって画素数面でPhantom 3から変更はありません。ただ、冒頭にご紹介したように色収差や歪みが低減されているとのことなので、そのあたりを見たいと思います。論より証拠…ということで、1本の桜の木を同じ位置から同じように空撮してみましたのでご覧ください。
うーん!Phantom 4キレイ!! Phantom 4の映像のほうが色のキワがシャープでクックリと見えます。桜の花もシャープに描写されていますが、地面の草の見え方の違いがわかりやすいでしょうか。ビットレートは両機種とも同じ60Mbpsなので、単純にレンズ・画像処理の差がこの映像の差になっていると思われます。最後は好みにもなってくるかとも思いますが、これだけの画質向上は購入検討のひとつの要素になるかと思います。
業務内で比較撮影をしてみて
前方障害物検知機能やアクティブトラックに代表される新機能の搭載が目立ったPhantom4のデビューでしたが、実際に空撮業務で使ってみると低空での安定感やスピード管理の簡易性、カメラの画質向上など基本的なスペックが確実に向上しているということが大きなメリットに感じました。地味なところかもしれませんが、操作性が向上するということはそれだけ撮影に専念できることにもなり、それに加えて画質が向上したカメラでクォリティの高い映像を制作することができると思います。今回のレビューがPhantom 4購入の参考になれば幸いです。