画像データとAIを融合
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株式会社日立製作所(以下:日立)は、電力事業者をはじめとした企業向けに、送電網などの重要設備の点検、監視、最適化のためのデジタルソリューション「Lumada Inspection Insights」を発売する。
同ソリューションは、日立エナジーと日立ヴァンタラが共同で開発したもので、衛星画像やリモートセンシング技術の一つであるLiDAR※、温度分布などの写真や動画を人工知能(AI)で解析することで、設備点検の自動化と安全性の向上、天候に関連するリスクや山火事による環境影響の低減、サステナビリティ目標の達成に貢献するとしている。
日立ヴァンタラの「Hitachi Image Based Inspections」、「Hitachi Intelligent Infrastructure Monitoring」と、日立エナジーの「Hitachi Vegetation Manager」、「Hitachi Map」の4つのコア・ソリューションで構成されており、単体または包括的なソリューションとして提供するという。同デジタルソリューションは、AIと機械学習を活用し、設備の状態やリスクを分析することで、障害や設備停止のさまざまな原因を特定する。
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また、予測分析により、運用や環境に関するリスクを評価することで、障害発生前の修繕を効率化できるとしている。日立エナジーのグリッドオートメーションビジネスユニット担当役員であるマッシモ・ダニエリ氏は次のようにコメントしている。
※LiDAR: Leaser Imaging Detection And Ranging(レーザー画像検出と測距)。対象物にレーザー光を照射し、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測することで、距離、位置や形状も検知できる。
ダニエリ氏:エネルギー転換は、現代において最も喫緊の課題の一つです。私たちは、お客さまと共に、カーボンニュートラルな未来を実現するための先駆的なデジタルソリューションを開発しています。今回、日立ヴァンタラと共同でLumada Inspection Insightsを発売します。本ポートフォリオは、適切な情報を必要なときに適切なチームに提供することを可能にし、信頼性、安全性、持続可能性の向上に貢献するものです。
日立ヴァンタラのChief Digital Solutions Officerであるフランク・アントニサミー氏は、次のようにコメントしている。
アントニサミー氏:データ駆動型になることは、デジタル化と持続可能性を加速するために不可欠です。日立グループは、データとAIを活用することで、さまざまな業務上・事業上の課題を解決し、ビジネス、社会、環境の改善に貢献します。私たちはお客さまと共に、産業資産の信頼性を向上させ、山火事を予防することで、持続可能な社会の実現に貢献します。
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Lumada Inspection Insightsは、マイクロサービス※ベースの包括的な機能を備えており、さまざまなソースから、設備の状態や健全性、障害要因などを単一の画面で可視化が可能。統合されたインサイトを元に、安全性、信頼性、俊敏性を向上させることができるという。高解像度の自動化された正確な広域監視システムを使用することで、現地への移動や従業員の配置の最適化など、運用とメンテナンスに対する持続可能なアプローチを促進するとしている。
※アプリケーションを複数の独立した機能として構成し、機能同士を連携してサービスを実現させる手法
現在、世界中の事業者が前例のない気候変動対策に取り組んでいる。2021年に発生した全世界の山火事による二酸化炭素換算排出量は6,450メガトンと推定され、これは2020年の欧州連合(EU)における化石燃料排出量の約148%にあたるという。これらの山火事やその他の異常気象は、送電線やその他の公益事業の設備にも多大な損害を与え、労働者の安全と送電網の信頼性を脅かしているという。エネルギー分野における製品の分析会社であるIDC Energy Insightsのリサーチディレクター、ジョン・ヴィラリ氏は次のようにコメントしている。
ヴィラリ氏:点検、計画、監視は、電力事業者が送電網の信頼性と回復力を維持するために行う最も重要な業務の一つです。Lumada Inspection Insightsは、さまざまなタイプのビジュアルデータと高度な分析およびAIを組み合わせたものです。これにより、電力事業者は意思決定を改善し、運用を最適化することで、信頼性、安全性、サステナビリティ目標を達成できます。
米国・テキサス州ダラスにおいて5月23日から開催されている北米最大級のエネルギー分野のイベント「DISRTIBUTECH INTERNATIONAL 2022」の日立ブースでは、Lumada Inspection Insightsが展示されているという。
Lumada Inspection Insightsの4つのコア・ソリューション
Hitachi Image Based Inspections
高い塔に登る、ヘリコプターから写真を撮るといった従来の検査方法には技術員への危険が伴う。Hitachi Image Based Inspectionsは、画像データを高度なAIおよび機械学習機能で解析することで、これらの危険で、コストや時間のかかるアプローチを代替。同ソリューションは、拡張性に優れた画像分析により、資産管理者が資産を特定し、欠陥を検出し、欠陥の重大度を分類できるように支援する。
また、欠陥の評価を自動化し、何千もの画像の前処理・解析を迅速に行うことが可能なほか、ヒューマン・イン・ザ・ループ※機能により、モデルベースとなるその分野の専門家による継続的なトレーニングが可能になり、幅広い資産と画像品質への対応を実現するとしている。
※機械学習において、学習サイクルの中に人間からのフィードバックが含まれることを指す。
Hitachi Intelligent Infrastructure Monitoring
電力事業者やその他の資産集約型の組織は、サービス領域の安全性と提供するサービスの信頼性を確保する必要性に直面しているという。
このため、電力事業者は安全に関するインシデントを防止するためのインサイトを持ち、インシデントが発生したときに効果的な対応が求められる。
Hitachi Intelligent Infrastructure Monitoringは、スマートカメラ、3D LiDARセンサー、エッジゲートウェイを介して収集した映像データを、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やERP(Enterprise Resource Planning:企業資産計画)などのデータソースと統合が可能。これによりオペレーターは、変電所などの機密性の高いエリアに関する粒度の細かい継続的な3D情報を取得し、相関関係や因果関係、リアルタイムのインシデントを見つけられるという。
Hitachi Vegetation Manager
Hitachi Vegetation Managerは、写真、ビデオ、Maxar※衛星画像など、さまざまな画像と、AIや高度な分析技術を活用して、植生作業活動や計画作業の精度と有効性を向上させるという。衛星技術の導入により、電力事業者は自社の全サービス領域を調査し、自動的に送電線を確認し、規制への準拠を維持できる。
また、トラックやヘリコプターでの移動を最小限に抑えることで、コストと二酸化炭素排出量の削減が可能。Hitachi Vegetation Managerは、画像と気象・生態系・伐採計画データや機械学習を組み合わせることで、送電網全体の状況を一目で把握できるようにするとともに、インサイトを深めることで、組織の意思決定を最適化するとしている。
※Maxarは米国の宇宙技術会社
Hitachi Map
Hitachi Mapは、EAM(Enterprise Asset Management:企業設備管理)、APM(Asset Performance Management:設備性能管理)、FSM(Field Service Management:現場作業管理)、ADMS(Advanced Distribution Management System:配電管理システム)、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)などの多数のアプリケーションからの情報を一つの使いやすい地理空間ビューに結合する。ユーザーは重要な情報にアクセスし情報に基づいた意思決定を行い、即座にアクションを実行できる。
ユーザーは、複数のシステムを確認したり、変化を解釈したりすることなく、重要な情報に直感的にアクセスが可能だ。このアプローチにより余分な重複作業を排除し、現場への不必要な移動による二酸化炭素排出を削減するとしている。