昨年の6月に発表されたParrot社のANAFI Aiが日本でもようやく販売が開始された。
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そのANAFI Aiで色々と検証する機会があったので、そのレビューを書こうかと思う。 ANAFI Aiに触れる前に、今までのParrotの機体の変遷を振り返ってみたい。
けれど、今回は通信関連の検証が中心だったので、通常の機体やカメラ性能のレビューではないので、それを求める向きにはParrotの機体の変遷
世の中にドローンという名がまだ知られていない2010年のCES(Consumer Electronics Show)でParrotはAR.Droneを発表した。ここから現在のドローンの歴史は始まったといってもよい。
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その後、2012年のCESではAR.Drone 2.0を発表し、そのAR.Drone2.0はフロントに広角のカメラ<720p(1280×720)/30fps>を搭載し、FPVを楽しむことが可能で、この鳥の目に人々は驚かされた。また、フライトコントローラーで自律制御も行っており、スマートフォンでの操作も可能で、今までのラジコンと一線を画した製品で、未来を感じさせるものであった。
日本でも2012年の7月からこのAR.Drone2.0は3万円程度で販売が開始された。
このAR.Drone2.0はAR.DroneアカデミーというWebサイトが準備されており、そこで自分のAR.Droneのフライト情報を見たり、また、共有したりすることも可能であった。また、SDKも準備されており、自分で簡単なソフトを作ることが可能であった。
そういった意味では、Parrotが最初に提示したのはFlying Robotという目線であったことが理解できる。
筆者もこのAR.Drone2.0を2014年ぐらいには入手し、色々と使ってみて、ドローンの面白さや可能性といったものを感じていた。
2014年には、Bebop Droneが発売された(日本では2015年4月から販売開始)。
このBebop Droneはまだドローンが珍しいときであったので、色んなところでデモをしたり、そこで撮った映像を見せたりしていたものだ。
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その後、2016年にはBebop Droneの後継であるBebop2も販売開始され、そのほかMomboやDISCOなどの製品も発表されて販売されたが、一般消費者向けの市場においては、特にPhantomやMavicシリーズに代表されるDJIのシェアが高く、2017年には一般消費者向け市場から商用向け市場にその製品の中心を移動した。
その中で、各業種のソリューションと連動したDisco-Pro AG、Bebop-Pro 3D Modeling、Bebop-Pro Thermal、Bluegrassなどの機体を発売していった。
しかし、その分野においてもDJIの攻勢は強く、なかなかシェアを増やすことが難しかった。
その潮目が変わってきたのは、米国防省におけるBlue sUASの動きだ。
(その詳細は、Vol.46 新しいステージに入ったドローン産業[春原久徳のドローントレンドウォッチング]を参照)
このプロジェクトにより、米国国内におけるParrotのポジションが高まり、ANAFIシリーズは、鉄塔や電波塔点検といった用途において、そのソリューションの使い勝手の良さもあり、少しずつシェアを伸ばしていった。
ANAFI Aiのすごさ
そういった中で、ANAFIの後継機となるのがANAFI Aiである。
このドローンがParrotらしさを示しているのは、上空LTEにいち早く対応しただけでなく、関連のソリューションを連携させたり、SDKを準備したりして、こういったLTEといった新たな環境の中で、開発者が新たなソリューションの開発を可能にしているところだ。
日本でも昨年の7月からNTTドコモにおいて、LTEの上空利用サービスが開始されたが、ドローンの機体にその対応SIMを差すという形で、簡単にこのサービスを使用可能にした最初の機体が、このANAFI Aiであった。
ANAFI Aiの設定
ANAFI Aiの設定のためには、まずApple iPhoneにFreeFlight 7のインストールが必要だ。
そのFreeFlight 7を使って同梱されているParrot Skycontroller 4と接続し、Parrot Skycontroller 4を認識させて、Skycontroller 4やANAFI Aiのソフトウェアのアップデートを実行する。(詳しくはユーザーガイドを参照)
その後、各種調整(コンパスキャリブレーションなど)を実施する。この項ではこの辺の詳しい設定は割愛する。
LTEの設定
正面から見て、右側側面にSIMソケットがあるので、そこにSIMカードを差し込む。
このSIMは上空利用で使用可能なSIMに限られるので、現在ではNTTドコモの上空利用プランのみが適用となっている。
また、SIMのサイズはnano SIMとなるので、注意が必要。ちなみに筆者はminiSIMのSIMだったため、docomoショップで2,200円を払って、カード変更をしてもらった。
SIMを差したあとは、まずそのSIMをANAFI Aiでアクティベーションする必要がある。
FreeFlight 7を起動し、ANAFI Aiの設定画面にいくと、SIMのアクティベーション前は、以下の図のように、Cellular accessが"SIM locked"という表記になっている。
ここで、Cellular accessタブをクリックすると、以下の画面となり、ここでEnter PINタブをクリックして、PINナンバーを入力する。
その後、正常であれば、以下のようにConnectedとなり、LTEの設定は完了する。
通信の設定画面において、自動/Wi-Fi優先/LTE優先の選択が可能になっている。
FreeFlight 7の飛行時の画面の上部のインジケーターの右に4Gに囲いがついているが、こういった形で4Gの接続ができるようになり、その4G経由でプロポやテレメトリー、FPVの表示がされる。
(今回、君津のDDFFにて実験したが、この場所はドコモの通信がやや弱く、地上ではインジケーターが赤く「弱い」なっているが空中に上げると通信強度が向上するため、飛行中は問題なかった)
今回の実験では詳細な通信遅延の実験などは出来なかったが、何回かの飛行において、著しい通信遅延の現象はなかった。
また、試験飛行の際には航路を設定し自動航行させたが、その航路設定に際しても、FreeFlight 7で以下のような設定を行った。
ANAFI Aiが拡げるドローンの可能性
ANAFI Aiは、LTEに簡単に接続することが出来る最初のドローンで、Verizonの通信ネットワークや機体管理などのSkywardソフトウェアと統合されて、ほぼリアルタイムでの飛行データ転送、遠隔操作や目視外飛行が可能になっている。
Skywardは以下のような機能が使用可能だ。
- 空域での3D地上情報の確認
- iOS用Skyward InFlightモバイルアプリで4GLTE接続をアクティブ化
- 運用、リスク評価、操縦士、フライトログなどを管理
- LAANC経由で管制空域にアクセス(米国での管制基準システムで、有人機や他の無人機とのリスクの確認が可能)
また、Pix4Dとの連携が可能で取得したデータを自動的にPix4D Cloudにアップロードすることが出来、そこでPix4Dのオルソ合成や写真測量などのソリューションで即時に解析が可能となっている。
その他、Parrotは以下のようなパートナーがANAFI Aiを活用するためのSDK(Software Development Kit<開発者向けキット>)を準備している。
- AirSDK(ドローンにコードを実装し機体制御などを行うSDK)
- GroundSDK(モバイルアプリの開発用SDK)
- OpenFlight(オープンソースのGCS<Mission Planner等>をカスタマイズするツール)
- Sphinx(ドローンシミュレーション環境と接続するツール)
- Olympe(Pythonスクリプトで様々な機体に機能を付加するためのツール)
- PDrAW(ビデオとメタデータを処理するためのツール)
これにより、既に多くのアプリケーション企業やサービス・ソリューション企業がパートナーとして、このANAFI Aiネットワークの環の中に入っていっている。
そこでの動きをみると、LTEにドローンが接続した途端に、別の世界がパッと切り拓かれていっていることを実感できる。
これはドローンの可能性を大きく広げるもので、その動きが米国において加速化している。
ANAFI Aiのセキュリティ
LTEに接続されるということは、セキュリティの強化もしていかないといけないが、ANAFI Aiはセキュリティの面からも既に以下のような対策がうたれている。
- ユーザーの同意なしのデータ共有保護
- FIPS140-2準拠およびCCEAL5+認定のセキュアエレメント
- 4G LTEの強力な認証
- デジタル署名された写真などの取得データ
- 透明性の高いバグバウンティ(脆弱性報奨金制度)による継続的なセキュリティチェック
Parrotはまたドローンの新たな地平をこのANAFI Aiを通じてみせてくれており、ドローンの新たな未来はすぐそこにあることを感じさせてくれる。
ANAFI Aiは非常に注目すべき機体であろう。