提供:CTA
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毎年1月にラスベガスで開催されるデジタルをテーマにした国際ビジネス展示会「CES」が、前回のデジタル形式を経て今年はハイブリッド形式で開催されました。CESは最新のドローンたちに出会える場でもあり、取材に行くのをとても楽しみにしていたのですが、昨年末からオミクロン株が急速に猛威を振るいだしたこともあり、残念ながら今年もオンラインでの取材となってしまいました。ということで現地からのリアルレポートはDRONE編集部のみなさんにお任せして、ここではオンラインからどのようなドローンの話題が見えたのかをご紹介いたします。
まず最初にざっくりと今年の開催状況について。リアル会場の規模やロケーションは、ラスベガスコンベンションセンター(LCCC)に昨年6月に新しくオープンしたWest Hallが加わった以外は2020年の時とほぼ同じで、サンズエキスポや周辺のホテルなど屋内外をあわせて11の会場が使用されました。日程も例年どおり2日間のメディアデイと4日間の展示会になる予定でしたが、GoogleやAmazon、META(旧Facebook)、Microsoftなどの大企業が次々とリアル出展を取りやめた影響か、直前に展示日が1日短縮され、1月3日と4日がメディアデイ、5日から7日までが展示会となりました。
CESを主催するCTA(Consumer Technology Association=全米民生技術協会)によると、2,300社以上の企業が出展(デジタル展示を含む)し、1,800のメディアを含む4万人が参加したとのこと。約4600社が出展し、18万人もの来場者が集まった2020年に比べるとほぼ半減状態で、会場もガラガラという話でしたが、それでもドローン関連の展示はけっこうあったようで、ほんとに会場に行けないのが残念でした。
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それにしてもリアル展示から急きょデジタル出展に切り替えた企業はけっこうあったようで、メディア向けのプレスカンファレンスの中にはリアル会場で動画を見せるというケースもありました。SONYは例年どおり展示ブースでプレスカンファレンスを行っていましたが、レイアウトにはかなり気を使っていて、オンライン向けも意識した演出をしてくれていたおかげで、いよいよ発売される「AirPeak S1」の発表もしっかり見ることができました。
前回はオンラインだけで出展企業をチェックするのはかなり苦労しましたが、ハイブリッドの今年は展示ブースの様子がそのまま見られるのと、会場が空いていて撮影しやすかったのか動画がたくさんアップされていて、リモートでもそれなりに取材がしやすかった気がします。昨年の経験をふまえてか、デジタルブースも情報を見やすくする工夫がされていたので、リアル展示と両方チェックするのに苦労するほどのボリュームになっていました。
さて、CES 2022のドローンの出展状況はどうだったかというと、「Drones」のカテゴリで検索すると85社、「Drone」のキーワードでは90社がヒットしました。ただし、カテゴリやタグ付けはあいまいで、パッセンジャー・ドローンや自走ロボットなどを含めると、昨年と同じぐらいの出展数だと思われます。今年もDJIはYuneecといった大手の出展はなく、リアル出展ではSONY、Autel Robotics、XDynamics、VETAL、そしてCES全体で目立っていた韓国のDoosanやHancom group、あとはスタートアップが集まるEurekaParkでドローンの機体がいくつか展示されていたようです。
オンラインで見かけたのは、去年のCESに出展していたIndoor Roboticsの「Tando」、Titraが開発するトルコ初の自律型の無人ヘリコプター「ALPIN Unmanned Helicopter」、水中ドローンでおなじみのChasing-Innovation Technologyなどで、CES 2018で取材したATARAINAの空調ドローンも開発が継続されているようです。フランスのDrone Interactiveが発売しているアミューズメントスポット向けのドローン・プレイ設備「ARCADRONE」などもあり、こちらは近いうちに日本でも登場するかもしれません。他にもAirSelfie「AIR NEO」はInnovation Awardを受賞していますが、カテゴリがドローンではなくDigital Imaging & Photographyとなっていました。
パッセンジャー・ドローンはリアル展示ではSkyDriveとASKAが話題でしたが、プレスカンファレンスではHyundai RoboticsとGMがそれぞれ製品を発表していました。どちらも昨年発表した内容を少しアップデートしたぐらいでしたがモックアップでもいいから見てみたかったので、急きょリアル展示をとりやめたのが残念でした。パッセンジャー・ドローンはすでに商用サービスを開始している国もあるので、来年あたりはもっと展示が増えてほしいところです。
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急きょ展示を取りやめたといえば、T-Mobileは昨年末にDRL(The Drone Racing League)と提携して5Gレーシングドローンを開発することを発表していて、CESの会場でお披露目する予定だったようですが、残念ながらブースだけが置かれていたようです。それでもなんとかデモレースは夜のラスベガスで実施されたらしく、地元TV局が中継したという情報がありました。
ドローン・レーシングに関しては、フランスのスタートアップMACAが水素駆動のフライング・レーシングカーを披露する予定だったようで、こちらはプロトタイプでもいいので展示を見たかったところです。
その他にドローン関連のニュースでもけっこうとりあげられていたのが、台湾のITRI(工業技術研究院)のセルフィ・ドローン「Autonomous Selfie Drone」で、ITRIのバーチャルサイトで紹介されていました。ドローンをそのままスマホに載せて飛ばすというのはけっこうリスクがあるような気がするのですが、AIがバランスをとりつつベストポジションで撮影してくれるという技術はすごいので、発売されたらヒットするかもしれません。
今年のCESをあれこれチェックして感じたのは、ドローンに関してはこれまで主流だったトイドローンからいよいよ本格的にビジネスでの活用が進みはじめたということです。ドローンの機体は基本機能が高度化し、運用するソリューションやサービスの出展が増えていて、コンシューマ向けからエンタープライズ向けのシフトも強まっています。以前はデリバリーが目立っていましたが、どちらかといえば点検サービスを中心に市場が拡がりそうで、Doosanはずばり「Solar inspection solution by hydrogen fuel cell drone」という機体でInnovation Awardを受賞しています。
また、メディア向けに新製品を紹介するPepcomというイベントでも紹介されていたSpooky Actionは既存のドローンをテザードローンにするシステム「Superfly」を開発していて、DJIやYuneecらメジャーどころのドローンに接続して使用することができます。有線を使用するテザードローンは運用の安定性から市場拡大が見込まれていて、国内でもNTTの関連会社が通信アンテナの代わりに使えるドローンを開発しています。
面白いのは今年の自動運転関連では完全自律に近い運転システムと衝突回避機能の技術に力を入れる企業が多く、ドローンの傾向とシンクロしているような印象でした。そのあたりはドローンをテーマにしたカンファレンス「The Expanding World of Drones」で、AI技術を駆使した自律型ドローンの開発で注目を集めているドローン企業Skydioと、ドローン用の衝突回避システムの開発でトップクラスのIris Automationが登壇しているあたりからも感じられました。
NTTドコモベンチャーズの投資先としても知られるSkydioは、2020年後半にエンタープライズ市場へ本格参入し、リアル展示される予定だった「Skydio」シリーズは、高度な自律飛行と衝突回避機能を備えた撮影ドローンとして価格を半分以下にしたことで、DJIの地位をおびやかすのではないかと言われています。同社は昨年3月に合計調達資金額が10億ドルを越え、ユニコーン企業の仲間入りを果たしたことでも話題になりました。Iris Automationは安全な水素燃料電池飛行を実現する技術の開発で、韓国のDoosanとパートナーシップを組んでおり、パッセンジャー・ドローン向けにも技術を提供しています。
カンファレンスの中では、「自動車と同じくドローンも自律飛行と衝突回避機能が当たり前になれば、操作することが特別なことではなくなり、人材不足や安全性を課題とするインフラ点検市場では一般化するだろう」というコメントがありました。必要なのは、関連する法規制や保健などの調整であり、このあたりも自動運転車と状況は似ていて、今年は有人地域における目視外飛行にあたるレベル4が解禁になるといわれているので、それにあわせた新しい機体のデザインも登場するかもしれません。
個人的にはレベル4の機能を持つ小型ドローンが開発されて、CESの会場をリモートで見て回れるようになることに期待したいところです。