COVID-19の感染拡大は、あらゆる場面でデジタル化を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)現象ともいえる動きを見せていますが、ドローン市場もその影響を大きく受けています。この数年の間にドローンの開発や技術研究を援助するコンテストも増え、そこからドローンに求められる機能や技術の方向性が見えてくることもあります。
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「Drone X Challenge 2020」
その一つ、ドローンの輸送と配送に関する技術の研究開発とイノベーションを推進するグローバルチャレンジプログラム「Drone X Challenge 2020」は、単純にドローンの飛距離や性能を競うのではなく、マーケットに存在しない独自仕様のドローンを設計開発することの支援を目的としています。具体的には、重い荷物を運んで長時間飛行できる安定した性能を持つドローンの開発で、電子部品以外はカスタムメイドであることが参加条件になっています。
カテゴリーは、マルチローターと固定翼(VTOL)で、それぞれ動力がバッテリーのみ、もしくはハイドロカーボンかそのハイブリッドと4つが設けられています。さらにペイロードの重量と最低飛行時間などでクリアすべき条件があり、その上でトータルなパフォーマンスに優れた機体が勝者に選ばれます。
プログラムの期間が2年間と長いのが特徴で、第1フェーズを通過すると32万ドル(約3,400万円)の助成金が得られ、第2フェーズを通過した後にファイナルにあたる第3フェーズを通過すると、100万ドル(約1.1億円)の賞金が獲得できます。
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ちなみにプログラムを運営しているKrypto Labsアラブ首長国連邦のアブダビを拠点とするグローバルなイノベーションハブで、シリコンバレーの500 Startupsの戦略的パートナーでもあります。最終で選ばれたチームには、資金調達以外にもグローバルで事業化を成功させるための様々な支援が受けられます。
プログラムは2018年10月に応募を開始し、55カ国から起業家や研究所、大学生など600近い応募がありました。2019年3月に発表された第1フェーズでは9社が選ばれ、その後、COVID-19の影響で日程が1年延長されました。
2020年3月に第2フェーズを通過したチームがそのままファイナルへと進み、今年5月に台湾の工業技術研究院「ITRI」のエンジニアチームと、ウクライナとカナダを拠点とする「UAVITA」の2社が第3フェーズ通過者に選ばれました。
ITRIのドローンは、50Kg以上のペイロードを持ち、3時間飛行できるマルチローターで、ハイドロカーボンを動力にしています。UAVITAのドローンは見た目がセスナ機のようですが、固定翼で50Kg以上のペイロードを備え、ハイドロカーボンを動力に6時間飛行できます。
この1年の間にドローンの飛行時間は飛躍的に伸び、3時間以上飛ぶマルチローターのドローンも登場していますが、50kg以上のペイロードを兼ね備えている機体はまだ少ないですし、規制緩和が進むドローンによる空輸でも実用性が高いといえそうです。
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「TRIG:Drones」
同じくドローンの運送技術開発を支援するプログラムは英国でも実施されています。英国の産学官連携研究開発拠点であるCatapultが運営する、ドローンの輸送研究およびイノベーション助成金「TRIG:Drones」を今年から立ち上げ、対象となる6つの新しい研究およびイノベーションプロジェクトが発表されました。運輸省が参加しているのものさることながら、ドローンの運用システムやソリューションに対して投資しているのが特徴だといえます。
「Leonardo Drone Contest」
ドローンのソフトウェア技術を競うコンテストでは、イタリアの宇宙航空開発企業のLeonardoが開催している「Leonardo Drone Contest」があります。ドローンに適用する革新的な機能を持つAIやコンピュータビジョン、センサーなどの開発を支援することを目的としていて、それらの性能をLeonardo社が用意したフィールドで競います。
イタリアの6つの大学と共同で開催され、対象のメインとなるのは博士課程の学生ですが、大企業や中小企業らも研究開発で参加協力しています。2020年9月に最初のコンテストが開催され、2022年まで3年間かけて行われますが、その間参加した学生は様々なサポートが受けられます。
「2022 IEEE Autonomous Unmanned Aerial Vehicles(UAV)Competition」
米国の電気・情報工学分野の学術研究団体IEEEも、ドローンのソフトウェア技術を競う「2022 IEEE Autonomous Unmanned Aerial Vehicles(UAV)Competition」を開催することを発表しています。屋内施設に設置された障害物を自律的に飛行し、移動する物体(プログラミングされたラジコンカー)を追跡する技術を競うもので、障害物には秒速1メートルで移動する複数の物体も含まれます。
第1ステップはシミュレーションで審査を行い、クリアした上位10チームが第2ステップへと進みます。次に全てのチームが同じ機体を使ってリアルなフィールドで性能を競い、10分間で3回のトライで最高スコアを出したチームが優勝となります。最終決戦は2022年3月にパデュー大学のUAV研究・試験施設で行われ、シミュレーション審査を通過したチームは移動費が提供されます。
「Indy Autonomous Challenge」
自動運転システムを競うコンテストとしては、自動車レースのIndy 500が世界初の自動運転車レース「Indy Autonomous Challenge」を10月に開催すると発表していて、こちらも同じ車両を使ってソフトウェアの性能を競うのがポイントとなっています。
まとめ
こうしたコンテストの内容から、ドローンの研究開発では大容量で長距離をクリーンに飛行する機体と、それらを指定したルート内で安全で正確に運用できるソフトウェアの大きく2つが求められているのが見えてきます。ソフトウェアに関しては学生や若い研究開発者たちを対象にしたものも目立ち、今後のドローン運用に必要な人材を産官学で育成しようとしていることがわかります。
今年もCOVID-19の影響でいくつかのコンテストが中止や延期になっていますが、ほとんどは来年に再開することが予定されており、そこでどのような新しいドローンたちが見られるのか楽しみにしたいところです。