ゴーグルに映し出されるドローンからのリアルタイム映像の没入感がたまらないDJI FPVですが、屋外でゴーグルの映像を頼りにドローンを操縦するには、国土交通省への申請&飛行許可承認が必要になります。
- Advertisement -
今回は、国土交通省のオンライン無人航空機飛行許可申請システム「DIPS」を使って「航空局標準マニュアル02」を利用した業務目的の「目視外飛行」包括申請(飛行経路を特定しない)を例に、申請及びフライト時の注意点について解説したいと思います。
国土交通省への飛行許可承認申請時の注意点
全てを詳細に解説するには膨大な文字数が必要なため、ポイントのみ取り上げて行きたいと思います。(事前に必ず保険にご加入の上フライトをお楽しみください。DJI FPVにはエアロエントリーが提供する無償付帯賠償責任保険があります。※製品パッケージに同梱資料はありませんので直接エアロエントリーのサイトをご確認ください。)
■申請の前に…
DJI FPVに限らない話ですが、国土交通省に飛行許可承認申請を行うには原則申請該当の機種で10時間のフライト経験が必要です。DJI FPVを航空法範囲内または航空法適用外の状況下で10時間は訓練してください。特に空撮機を普段使っていてFPVが初めての方は10時間以上したほうがよいかと思います。PhantomシリーズやMavicシリーズとはやはり感覚が違います。
- Advertisement -
また、ゴーグルを利用してフライトするには「目視外での飛行」に対する申請が必要になりますが、一定の飛行経験時間(訓練)が別添資料6「無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性」で必要になります。
具体的にどのような飛行経験時間(訓練)が必要かというと、飛行マニュアルの2−5には"目視外飛行においても、2−2に掲げる操作が安定して行えるよう、訓練のために許可等を受けた場所または屋内にて練習を行う"とあります。2−2というのは…
- 対面飛行:対面飛行により、左右・前後・水平面での飛行
- 飛行の組み合わせ:操縦者から10m離れた地点で水平・上昇下降を組み合わせて飛行を5回連続して安定して飛行
- 8の字飛行:8の字飛行を5回連続して安定して行う
となります。2に掲げられている技能(2−1に掲げる「基本的な操縦技量の習得」も含む)を習得すること(=習得に必要な時間訓練を行うこと)が別添資料6「無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性」で求められますので、DJI FPVを購入したらまずはひたすら訓練して上記操縦技術を習得しましょう。
- Advertisement -
■目視外飛行と言っても補助者は必要
国土交通省に飛行許可承認申請が必要な飛行は、原則「補助者」が必要です。目視外飛行でももちろん同様となりますので、マニュアル3−4にある通り「飛行させている無人航空機の特性を十分理解」した補助者を配置して、飛行ルート下に第三者がいないことを確認しながら飛行させる必要があります。申請書は、飛行マニュアルに記載された内容を実施することが前提となったものなので、必ず飛行マニュアルを確認し、記載内容を遵守した上で飛行させてください。
ちなみに「補助者を配置しない目視外飛行」は「飛行経路」の特定が必要な申請となります(レベル3の飛行:離島間や山間部などの無人地帯に限る)。飛行経路を特定しない包括申請の場合は必ず補助者を配置して周囲の安全を確保しながら飛行させましょう。
■無人航空機の製造者、名称、重量等/運用限界等と追加基準への適合性
DJI FPVは「資料の一部を省略することができる無人航空機」に掲載されていないため(2021年3月22日現在)、申請に必要な機体の情報を全て記載する必要があります。DJI FPVのマニュアルやWebサイトを確認すれば必要なスペック等の情報は記載がありますので、それらを参考に機体登録をします。
「 最大搭載可能重量(kg)」については筆者は情報を見つけれられなかったのですが、「0」kgと記載すればOKです(DIPSには「取扱説明等に記載は有りません」というチェックボックスがありますが、こちらにチェックを入れても「重要な情報なのでメーカーに確認してください」と国土交通省から修正依頼が入ります)。
別売りのモーションコントローラーを利用する場合は「11. 飛行させる方法について入力してください。」の選択肢で「その他」にチェックを入れ、モーションコントローラーのマニュアルを添付しましょう。
また、「無人航空機の追加基準への適合性」でもひとつひとつ説明する必要があります。適宜機体やモニター画面を撮影、添付してください。特に「地上において、無人航空機の位置及び異常の有無を把握できること(不具合発生時に不時着した場合を含む。)。」という項目については注意が必要です。
DJI FPVのモニター画面には地図が表示されていないため、下記のような対応が必要です(A、BいずれかでOK。飛行許可をいただいた記載事例を参考にご紹介していますが、申請条件によっては許可が降りない可能性もありますので、その場合は個別に国土交通省と調整してください)。
A:「その他」にチェックを入れ「プロポに画面表示はないが、FPVゴーグル(モニター)上にてホームポイントの方向がわかり、現在のホームポイントからの高度と距離がわかるので、トータル的に位置の確認ができる。」と備考欄に説明。ホームポイントと高度、距離が表示されたモニター画面の写真を添付する。
B:「その他」にチェックを入れ「操縦装置に機体の位置及び異常の有無等を把握できる表示が出ないが、補助者を配置し常に機体の動きを監視させ、機体の位置及び異常の有無等を確認できるようにする。」と備考欄に説明。
提出用の画像サンプルもご提供したいところですが、DJI FPVは「資料の一部を省略することができる無人航空機」に掲載されていないため、申請は「固有の機体」についての申請になります(掲載済み機体は「機種」として扱われます)。したがって、提出する写真は申請対象となる固有の機体の写真が原則必要となりますので、本記事でのデータ提供は控えたいと思います。
飛行時の注意点!飛行マニュアルを遵守して安全管理を
パイロットがゴーグルを使用してフライトさせると、機体から見える映像以外に視覚情報がなくなるため、飛行マニュアルを遵守して飛行範囲を安全な環境に保ってください。補助者は、機体の位置や状態だけでなく、周囲を確認して飛行範囲に第三者が近づかないよう確認、注意喚起も必要です。
「航空局標準マニュアル02」から「3.安全を確保するために必要な体制」を例に具体的な対応を見ていきます(下記は抜粋です。マニュアルは必ず熟読してください)。
・場所の確保・周辺状況を十分に確認し、第三者の上空では飛行させない
・風速5m/s以上の状態では飛行させない
ドローンをフライトさせていちばん避けなくてはならないのは第三者に危害を加えないことです。よって、必ず第三者が存在しないエリアでフライトをする必要があります。また、飛行に大きな影響を与える強風の中でもフライトは避けるべきです。地上で5m/sでも、上空に行くほど風速は速くなる傾向があるため、上空はより強い風が吹いていると想定する必要があります。
・補助者は、飛行範囲に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う
・補助者は、飛行経路全体を見渡せる位置において、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視し、操縦者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う
フライト時には必ず補助者を適切に配置し、第三者が飛行経路下に入らないように、そして刻々と変化する気象状況を監視してパイロットの助言をする体制を構築してください。
・第三者の往来が多い場所や学校、病院等の不特定多数の人が集まる場所の上空やその付近は飛行させない
・高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない
・高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設付近では飛行させない
予期せぬ飛行経路からの離脱も想定し、上記のような場所の付近ではフライトをさせてはなりません。予期せぬ電波の遮断、突然の突風、操縦ミス…もしかしたら「あるかもしれない」アクシデントに備えた飛行範囲でフライトさせることも重要です。
・人又は物件との距離が30m以上確保できる離発着場所及び周辺の第三者の立ち入りを制限できる範囲で飛行経路を選定する
・飛行場所に第三者の立ち入り等が生じた場合には速やかに飛行を中止する
第三者や第三者の物件が近くに迫った環境でのフライトは避けましょう。特にスピードが出るDJI FPVは通常の空撮機よりも第三者や第三者の物件から距離を取ることが必要です。緊急ブレーキ&ホバリングボタンがあるとは言え、Sモードでの通常制動距離は最低30m以上です。PhantomやMavicなどの機体フライト時以上に安全な距離の確保が必要です。
抜粋ではありますが、上記が「航空局標準マニュアル02」を利用するときの「安全を確保するために必要な体制」です。「航空局標準マニュアル02」を利用して国土交通省に飛行許可承認申請をする場合は、上記をはじめとするマニュアル記載事項を遵守する必要があります。
「人・物件から30m未満の距離」について申請を通していたとしても、離着陸時は人又は物件との距離を30m以上保つ必要がありますし、飛行経路は第三者がいてはならず、フライトを助言する補助者が必須となります。
安全にドローンを楽しむために航空法のルールを活用しよう!
航空法は、規制という側面もありますが「安全にドローンを楽しむための考え方」を示したものでもあります。申請内容と添付(指定)したマニュアルの内容をきちんと理解した上で、その内容を遵守してフライトを楽しみましょう。
もし、「航空局標準マニュアル02」の記載内容では自分が行いたいフライトを実現できないのであれば、オリジナルのマニュアルを作成して飛行許可承認をもらえばマニュアルとしては問題ありません。ただし、標準マニュアルの内容が航空法で考える「安全」の基準となっているので、標準マニュアルから削除した内容があるとすれば、それを補完できる追加の安全対策が求められます。
FPVという魅力的なジャンルを多くの人に提供する可能性を示したDJI FPVです。この楽しさを多くの人が楽しめるよう、ユーザーひとりひとりがルールを守って安全に楽しんでいただければ幸いです。