Type-Pは、エントリーが難しいエリアや目的地が沿岸から離れている場所での活躍を想定し、飛行して移動・着水することで水上航行・回遊を開始するまでの移動時間を短縮可能にするためのモデルとして検討、研究開発されている。同実証テストでは、既存固定翼機をベースに自動帆走機構やセンサー、各種loT機器の搭載を可能にするため、独自に設計製造をしている。
- Advertisement -
これまで、桟橋やビーチが整備されていない浅瀬、暗岩・洗岩がある岸壁などの沿岸部や雑草が生い茂った河岸では、測定機器を搭載した小型ボートを持ち込み航行させることが困難なため調査が難しいとされていた。同実証テストの成功を受け、こういった有人では入りにくかった浅い沿岸部や河川部において、水深、水質調査や魚群探知を無人で実施可能になるという。
また、海水浴場や沿岸部などで、沖に流された要救助者の発見と着水後の伴走を行うことで要救助者の位置把握が正確となることから、救助時間短縮を可能にするといった水場での救護用途などでも要望・期待されている。
今後のステップとして、運用試験を通して想定ミッションとその際の海況に耐えうる船型(飛行体の設計も含む)と帆艤装形態を明確にし、可用性とのバランスを考慮しながら、大型化(長航続距離化、ペイロードの増大)を実現する。また、効率化軽量化に加えて、最良の帆艤装が最良の飛行形態と合致しない部分もあるため、ドローンのユースケースやユーザエクスペリエンスを考慮しながら設計に反映させていくとしている。
- Advertisement -
■実証実験で証明された稼働条件と概要
- モーターをプロペラを推進力とする固定翼機として飛行することで、帆船の約20倍の最高速度100km/h、巡航速度45km/hで目標活動海域に移動
- 着水後、収納していたセールを展開し、その後モーターを停止。ヨットと同様に自然風だけで帆走することでバッテリー消費を約1/60に抑え、60倍の長時間稼働を実現
■想定する活用イメージ
固定翼機の飛行と帆船の長時間稼働の長所を両立することで、例えば河川やダムの堆積物調査などで、川に入るまでに大変な時間と労力がかかっていたような場所でも、飛行して移動することで障害物を飛び越えて目的地に到着し、調査活動を実施、その後、下流側の回収しやすい場所で回収するといったシーンでの活用を想定している。
また従来のマルチコプター型ドローンでは、1回の飛行時間が10分~20分と制限されていることから難しかった遭難者の捜索も、この「Type-P」であれば、固定翼機の高速移動と滞空時間の長さに加え、往路は飛行、復路は帆走することで捜索距離を約2倍に伸ばすことができるため、実現が可能になる。
■オリジナル飛行する帆船型ドローン「Type-P」概要
開発経緯
Type-Pの開発では、高速長距離移動が可能な固定翼機の特性を活かして、素早くターゲット水域に着水し、着水後は帆走による低消費電力な航行や滞留が可能な帆走飛行艇のプロトタイピングを実施。同プロジェクトでは、移動・運搬時とミッション実行時で大きく形態を変えるType-Cの開発もおこなっており、状態によって形態変化する点でその延長線上にある。
船体デザイン
既存の固定翼機をベースに格納可能なセールや帆走時に必要となるラダー、センターボードを追加。シンプルな構造で最大の効率を引き出すことと軽量化に配慮している。