ドローンを特定の道路やエリアを監視する目として活用する
今年はオールデジタルで開催された国際デジタル展示会の「CES2021」ですが、主催するCTAが毎年会場で発表するテックトレンドも例年と同じようにオンラインで開催され、その中で注目すべきキーワードの一つに「Robotics and Drones(ロボティクス&ドローン)」が選ばれていました。
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今年はその他にも、Digital Health(デジタルヘルス)、Digital Transformation(デジタル化)、5G connectivity(5G通信接続)、Vehicle Technology(車両開発技術)、Smart Cities(スマートシティ)の計6つが注目キーワードに選ばれていましたが、それぞれが単体で注目されるというよりも、それぞれを組み合わせて新しいサービスやソリューションをデザインしようとする動きが進んでいるという印象でした。その予感が的中するかのように、CESが終了した直後に英国で興味深い発表がありました。
ロンドンの北西にあるミルトンケインズは、ブリティッシュテレコムを含むパートナーらが連携するコンソーシアムが支援する「MK 5G Create project」を立ち上げ、5G技術を利用して街を活性化するアイデアを募集し、地域全体と施設をテストベッドとして提供しています。
そのプロジェクトに参加する、ドライバーレスで自律走行する自動運転シャトルなどの開発で知られる英国企業のAurrigo社は、自社で開発する小型ポッド「PodZero」にドローンを搭載し、公園の周辺を鳥の目からリアルタイムで見守る実証実験を行うことを発表しました。
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PodZeroは、都市部のファーストマイルとラストマイルの移動手段として開発された、最高時速25kmの低速で走行する4シートのコンパクトな自動運転車で、2017年に発売され2019年のCESでも実機が公開されています。
外部との双方向通信などさまざまなオプション機能が搭載可能で、今回のプロジェクトでは屋根の部分にドローン用の着陸パッドが備え、そこからティザー(有線)につながったドローンを約10メートルの高さで飛ばし、移動するポッドの上をホバリングしながら周囲を監視することが計画されています。
小型ポッドは自動で公園を周回し、ドローンの高解像度カメラから5GでストリーミングしたCCTVの映像をセキュリティセンターにリアルタイムで送信します。Aurrigoの技術責任者によると、自動運転車とドローンを組み合わせた世界初の自動化されたセキュリティ・ソリューションであり、地上と空の両方から監視できるのでより地域の安全性を高め、コストも削減できるといいます。
実証実験は3月末から開始を予定していますが、COVID-19の影響で変更される可能性もあり、現時点ではドローンの詳細についても公開されていません。ですが技術的にはそう難しいことではありませんし、Aurrigo社は以前にミルトンケインズで10人乗りの自動運転シャトルを自律走行させるテストを成功させているので、あとはどのドローン会社と組んで実施されるのか発表を待つばかりです。
英国では以前にもドローンを鳥の目のように使うというアイデアが、ウェストミッドランドで提案されていました。内容は、市内を走る主要な道路の交通状況を、高速ハイブリッドのVTOL固定翼ドローンを利用して監視しようというもの。
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混雑の状態や事故があった場合に現場の状況を素早く把握し、データとして保存するのが目的です。2018年に計画が発表された当時は、通信速度の問題で撮影には動画ではなく静止画を使われ、そのため高速で移動できるドローンを採用することになったと考えられます。それでも12年間で約280万ポンドの社会的利益があると試算されており、同じ計画が現在の技術でリプレイスされれば、さらに効果が高められるかもしれません。
他にもドローンとモビリティと高速通信の組み合わせでは全くのアイデアレベルではありますが、電動オートバイを開発するインドのEmflux Motors社の創業者でチーフデザイナーのVinay Raj Somashekar氏は、「C60 Polestar」という自動運転のコンセプトモデルを、プロダクトデザインを紹介するメディアYANKO DESIGNで発表しています。
特徴あるデザインの電動オートバイには「Odin’s Eye」という名のドローンが附属しており、普段はローターの部分を折りたたんだ状態で格納されています。ドローンは必要に応じてオートバイの周辺を3kmの範囲で自律飛行し、36倍までズーム撮影できる16K動画で走りを記録してくれます。
さらに、ドローンに搭載されたLiDARを、障害物を回避してライダーの安全を守るスマートアシストとして使うことができるほか、手放しで自動運転できる"禅モード"と、アクセルとブレーキもコントロールする"トラックモード"にも切り替えられます。詳細なスペックは紹介されていませんが、自動運転を実現するのにドローンとオートバイ間の通信には5G程度の速度は必要と考えられ、実用化は2040年を目指しているとあります。
モビリティと対でドローンを飛ばすとなると今度は空が混雑しそうであまり現実性はありませんが、特定の道路やエリアを監視する目として活用する方法はスマートシティの計画でもよく見られるので、実用化される可能性はありそうです。そうしたニーズにあわせてこれからどのようなドローンがデザインされるのか、これからもウォッチしてご紹介していきたいと思っています。