2016年より執筆している「ドローンビジネス調査報告書」(株式会社インプレス)だが、毎年3月に発行していることもあり、そろそろ来年発行のための準備を始めている。まず行うのは、今年のドローンビジネスの状況がどうであったかを振り返る作業だ。その後、年明けくらいから各関係者の方々とインタビューを行い、現在の状況や予測を固めていく。
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2020年のドローンビジネスの状況把握にむけて
2020年を迎えるにあたって、2019年にもう少し進んでいくと考えていた実用化に関して、その壁を意識し始めていたドローンサービス提供企業やユーザー企業がその部分を克服しながら実装が進んでいく年になるのではないかという見立てがあった。
2020年が始まってみると、2つの理由で実装が進みにくいポイントがあった。1つが、一番実用実装に近いDJIの機体が多くのユーザー企業での役員会を通らないということだった。いわゆる中国機排除という空気感の中で、今まで実証実験で行ってきたDJIの機体で実装配備していくことを役員に対して説得することが難しい企業が多くあった。
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そのため、DJI機から国産機体(当然フライトコントローラーもDJI製ではない機体)へのシフトが行われたが、DJI機から国産機体にシフトすることは難しく、機体価格の問題もあるが、それ以上に飛行の安定性やユーザビリティの点での差が大きく、ほぼ実証実験のステージを初めから始めるに近い内容となった(いくつかの企業で、役員会へ実用実装の提案書を作成する手伝いを行い、その中でも進んだものと進まないものがあったが、結局はその企業が持つ課題と解決に向けての本気度や切実度の違いということが結果として大きかったように思う)。
この流れは、先日発表された政府調達方針もあり、より強まっていくことが想定されるが、先日のコラムでも書いたとおり、何のためのドローンソリューションかということを明確にする必要があるだろう。
もう1つの実装の弱さは、新型コロナウイルスの影響である。
「移動の制限」ということで、多くの現場での実証が年度前半は行うことができなかった。今年度は昨年度以上に実践的な実証が各現場で計画されていただけに、この期間で実施できなかったのは様々な遅れを引き起こしている。上半期が終わった時点で、今年度の業績の下方修正が予想される企業では開発費の縮小が生じたケースもあった。
今年度計画に変更がない企業も、下半期からのスタートということで現場での実証が集中し、現場リソースが重なっていることもあり、計画は遅れがちだ。年度末にむけて、特に国プロなどは予算執行期限もあり、より現場リソースが足りない状態が続いている。
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ただ、中長期的には、今回の新型コロナウイルスによるNew Normalにおいて、ロボティクスやDX活用の動きは大きくなっており、そこでのドローン活用の場は拡がっている。
各業界でのドローン実用化レベル
ドローンビジネスは、今までなかなか定常的なビジネスになっておらず、国や自治体の予算を使った実証実験や各ユーザー企業での開発費という形で、ドローン関連企業は売上をあげてきたが、これからはどれだけ実用で使われているかという勝負になってくる。そこで安定的に継続的に稼げる企業が伸びていく企業ということになる。
ドローンビジネスはBtoBということもあり、そこでのドローンソリューションは各業界で異なっている。その業界での実用化レベルも、今後のビジネスを組み立てる上で非常に大切なポイントである。その実用化レベルを測るために5つの視点でポイント化する手法を作った。
ドローン実用化にむけての条件
- 技術の確立
- 方式の確立
- 容易性
- 制度化
- 経済性
■技術の確立
これはその内容に応じた技術が確立しているかという視点で、ドローンの機体制御だけでなく、カメラやセンサーなどのペイロード制御技術やその現場に即した個別の技術が伴っているかということだ。
■方式の確立
これは個々の技術ではなく、その技術の方式や自動化などの実施技術がいかに確立しているかという視点となる。これは機体管理や取得したデータ処理などの技術の使いやすさや効率化がなされているかということだ。
■容易性
これは「方式の確立」とも連動するが、横展開するためのアプリケーションやトレーニングマニュアルがいかに整っているかという視点である。実用化の壁という点においては、この「容易性」というのは非常に重要なポイントになってきている。
■制度化
これは外部的な要因で、法令や省令、業界でのルールやガイドラインが整ってきているかという視点である。特に点検などの市場においては、各種点検でのルール(実施サイクルや点検箇所など)が定まるとドローンの立ち位置が決まるため、定常的な利用という点では非常に有効となるポイントだ。
■経済性
ドローンソリューションというものも、多くはそのものが目的ではなく、手段という点からも、この「経済性」が伴わないソリューションが定常化するのは難しいだろう。「経済性」は導入効果ということで、実施することで付加価値を上げるか(企業収入の増加、人的リスクの低減、顧客満足度の向上など)といった方向とコストの削減が図れるか(人的リソースの効率化、期間の短縮、SCMの実現など)といった方向がある。
そして、その効果が明確になることでそのドローンソリューションがきちんと企業の中で予算に組み込まれることがゴールとなるだろう。また、公共での利用といった点でいけば、毎年きちんとそのソリューションが予算化されているのかということも非常に重要だ。
以上、5つの視点において、各業界がドローンソリューションに対して、どういったシチュエーションであるかを把握し、弱い部分を強めていくことで、その業界でのドローンソリューションの実用実装が進んでいくという形となる。
各業界でのドローン実用化レベル例
以下に筆者が作成した例をいくつか挙げたい。各レベルは4点満点で、見出し横の()内は平均点を入れている(点数はあくまで筆者の私感となる)。
「ドローンビジネス調査報告書2021」では全業種のこういったチャート図を作成し、より実用化の状態を把握するとともに、各ドローンソリューションがどれだけビジネスに繋がっているかを検証し、市場規模の算出を策定していく予定をしている。ドローンサービス企業やユーザー企業においては個別にコンサルテーションも行っているので、興味ある方はお声がけいただきたい。