産業用ドローンが一同に揃い飛行する1日
屋外で産業用ドローンが飛行するイベント「富士山UAVデモンストレーション2020」が、2020年11月3日、御殿場市陸上競技場にて開催された。同イベントは今年で3回目の開催となり、出展企業・団体数は18社まで増えた。そのうち10社がデモフライトを行って、ドローンの社会実装に向けて用途に応じたさまざまな機体バリエーションが整いつつあることを印象付けた。
- Advertisement -
同イベント開催にあたり昨年より会場を提供している御殿場市の若林洋平市長は、開会式でこのように挨拶した。
ドローンは1年の進化がとても早い。災害時の活用をはじめ、空飛ぶクルマなど夢のある新たな産業も含めて、ドローンはこれからの経済活動に欠かせないものだと考えている。御殿場市はドローンの聖地を目指して、これからも全面的に協力していきたい。
主催の慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの副代表である南政樹氏は、「御殿場市の協力なしにはこのイベントは成立していない」と謝意を述べて、来場者に語りかけた。
- Advertisement -
ドローンやエアモビリティに関する展示会はさまざまあるが、実際に機体が空を飛ぶイベントは実に少ない。ぜひ、実際にこうしたものが使われる社会を想像してみてほしい。
来場者数は(午後早めのヒアリング時点ですでに)200名を超えており、同イベントの注目度が年々上がっていることが窺えた。
イデオモータロボティクス・Dアカデミー・アイネスプロによるデモの様子。機体はFreefly社「Alta-X」
今年のデモフライトは、アメリカのFreefly Systems Inc.(米国シアトル)社製で、最大ペイロード15.9kg、最大飛行速度95km/hといスペックを誇るAtla Xから始まった。
- Advertisement -
自律制御システム研究所(ACSL)によるデモの様子。機体はACSL社「PF-2」
ジャパン・インフラ・ウェイマークによるデモの様子。機体はSkydio社「Skydio J2」
ACSLの「PF-2」やSkydioといったお馴染みの機体もデモフライトを行い、安定の飛行を披露した。
森山環境科学研究所によるデモの様子。機体はWingtra社「WingtraOne」
森山環境化学研究所は、日本国内にまだ4機しかないというVTOL機「WingtraOne」の飛行をお披露目した。森林調査で実際に利用されているそうで、マルチコプターの場合は充電5回でカバーできる範囲を一度でモニタリングできる航続性を謳った。小回りがきく飛行の機動性や静かなプロペラ音に驚いた。
WorldLink & Companyによるデモの様子。機体はWingcopter社「WingCopter」
同じVTOL機でもそのスピードと航続性を魅せたのは、先日、琵琶湖横断を成功させて話題になった「WingCoper」だ。最大飛行速度は150km/h、最大航続距離は100km、最大飛行時間は2時間だという。競技場近辺の上空を高速で航行する際は、GCS(Ground Control System)で予め設定したウェイポイントや飛行経路をモニター表示して、観客にも飛行状況を共有。多くの来場者がスマホをかざして記録していた。
HEXaMediaによるデモの様子。機体は同社オリジナル機(大型マルチコプター)
また、吊り下げ式で荷物を運搬するHEXamediaの大型物流機も目を引いた。荷物が地面に到達すると自動でリリースするフックを備えており、離島や緊急物資輸送における実用を見込むという。切り離し機構にすることで高度を維持できるため電波が届きやすい、離着陸の時間を節約できるなどの実用性は魅力的だ。
DアカデミーによるParrot社「Disco」の編隊飛行は、さながら航空ショーのようで盛り上がった。このほかにも、空撮技研による係留装置「空撮技研社ドローンスパイダー」、ジオサーフによるsenseFly社「eBee X」のデモも行われ、徳島大学制御工学研究室は、飛行経路を再生できるフライト機能や「倒立型ダクト機」を発表した。
徳島大学 制御工学研究室による「倒立型ダクト機」には多くの歓声が上がった
「富士山UAVデモンストレーション2020」は、非常にバリエーションに富んだ内容で、出展者・来場者ともに笑顔や驚きの声が溢れる活気あるイベントとなった。晴れていれば、客席の目の前に富士山が一望できたという。来年は富士山を背景にさまざまな産業機が舞うことを期待したい。