実践試用
さて、いよいよPocket 2を現場に持ち出すことにした。早速TV撮影の現場で使ってみた。デモ機が届いた翌日の現場で、まだ全然その機能などを理解していない段階での利用だったが、現場で十分に理解が進んでいくシンプルさだった。私とディレクターで、手探り状態で使ったものの、十分にこちらが意図した映像を撮ることができた。
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現場では、メインカメラはソニーPXW-X200でENG取材である。そこにサブカメラとしてPocket 2を投入して、移動ショットなどを追加することにした。
ENG取材と併用してPocket 2を現場に投入してみた
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とにかく、この小型軽量なボディーがロケの邪魔にならないのが良かった。あくまでもメインはPXW-X200での取材で、しかもディレクターとの2名体制なので撮影機材は最小限だし、ディレクターにも荷物を持ってもらっているぐらいだ。そんな中で「あると便利だが、なくても困らない追加機材」を投入するには、本筋の邪魔にならないことだ。
その点でPocket 2は、ポケットやボディーバッグになどにスッと片付けておくことができるスマートさとサイズで、扱いもシンプルなので気軽に使うことができた。
上述の「カバー」にアクセサリ一式をまとめておけるので、持ち運びも煩わしくない。正直な話、カバーに収納したあとは結構乱暴に鞄の中に放り込んで持ち運んでいたのだが、その程度の使い方ができないと現場に持ってこられない。その点でもPocket 2は合格だった。
その日の使い方では、ほとんどが本体の液晶画面だけで行うことができた。スマートフォンを繋げば大ききな画面で見られるメリットはあるが、パッと使うには、スマホを接続するアプリを立ち上げるなど、一手間も二手間も必要だし、すぐに仕舞うこともできない。
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Pocket 2をメインカメラに使うようなタイプの撮影ならば、もちろんスマホ併用を積極的に行いたいが、あくまでも味付けとして活用するなら、最小限の構成で利用したい。その観点で言えば、Pocket 2の本体液晶画面は十分に仕事を果たしてくれていると思う。ハイアングルやローアングルの時は見づらい・見えないというのがある。これは、スマホを直結した場合も、スマホ自体をチルトすることは出来ないので似たようなものだ。
ただ「Do-It-Allハンドル」を併用したスマホとのワイヤレス接続は有用だ。ワイヤレス接続の場合、遅延は実測で13フレーム前後あったが、ゆったりとした電動ジンバルの動きならそれほどは気にならないレベルだった。
一脚などにPocket 2を取り付けてハイアングル撮影する場合などは便利だ。なお、スマホとのワイヤレス接続の有効距離は、Wi-Fiの電波が溢れる住宅街の路上で5m程度だった。遠隔操作や遠隔モニタリングには向かないが、ローアングル・ハイアングル撮影時の確認用であれば十分な性能だ。
スマホを繋げば、カメラのマニュアル設定も簡単に調整できる。アイリスは F1.8固定だが、ISO/ISO MAX/SHUTTER/EV± を調整できる。ホワイトバランスも100K単位でプリセット設定でき、フリッカー低減機能も備わっている。露出オーバー警告やヒストグラムの表示もできるので、Pocket 2でガッツリ作り込みたい人でも、満足できるマニュアル調整ができるだろう。
スマホを使ったマニュアル設定は分かり易くアクセス性も良い
しかし、我々が現場で求めているPocket 2の使い勝⼿は、オートで賢いことだ。ホワイトバランスぐらいはメインカメラに色温度を合わせて固定したいところだが、あとは自動で賢く撮っておいてほしい。
今回の現場は屋外だったので、空の明るさに引っ張られて画がアンダー気味にならないかが心配だったが、まったく違和感なく、問題なくオートで撮れている。屋外から屋内、屋内から屋外に撮影しながら移動するような場合でも、自然に滑らかに露出を補正している。
Pocket 2でのフッテージ。フルオートで使っても、空に引っ張られてアンダー気味になることもなかった
また、顔認識してフォーカスなどをトラッキングできる、ActiveTrack 3.0は一度被写体を認識して捕まえると、強固にトラッキングを続ける。
セルフィーモードなどで自分の顔を認識させてから、試しに他人にも「セルフィー試してみ?」と使わせようとしてPocket 2を渡しても、私の顔から認識が離れてくれない(笑)。こちらも、本体の液晶画面をタッチするだけでトラッキングモードに入るので操作は簡単だ。
フェイストラッキングでしっかりとフォローしてくれる
プロの現場なら、マニュアル設定でガッツリと作り込まないといけないような場合は、ミラーレス一眼カメラなどと大型電動ジンバルを使うような案件に切り替わるので、Pocket 2に求めるのは、オートでちゃんと撮れていることが最も求められると思う。その点でも賢くて使い易いので、求めている性能を発揮してくれている。
気になったのは、バッテリーのもちだ。今回、朝の11時から昼ご飯無しで午後13時まで取材をしたのだが、ちょこちょこと使う程度の頻度だったにもかかわらず、Pocket 2のバッテリーの減りは早く、取材を終わるころにはほとんど残量が無かった。「Do-It-Allハンドル」でスマホとのワイヤレス接続を併⽤していたのもあると思うが、本体も発熱をしっかりと感じられたので、消費電⼒はそこそこありそうだ。
Pocket 2のバッテリーは内蔵式で交換できないが、USB給電しながらの運用は可能なようなので、いざというときはモバイルバッテリーを併用する用意はしておきたい。また、今後は増装バッテリーなどを本体下部に装着できるなどの追加アイテムも期待したい。
今回のPocket 2の目玉機能でもある「音声の強化」については、4つの本体内蔵マイクによる「DJIマトリックスステレオ技術」があるが、ENGの現場で使うことに限って言えば特に検証していない項目だ。そもそもテレビのENGロケでステレオ収録は少ないので、音声がしっかりと録れているのは当然だが、方向性などは注力しない点だからだ。
一方で「ワイヤレスマイクトランスミッター」は、重宝しそうだ。それこそテレビのロケでは、こんなマイク使わないでしょ?と思うだろうが、重要なのはワイヤレスマイクの内蔵マイクではなく、外部入力の方だ。ここに、ミキサーからのサブアウトを入れるなどすれば、メインENGカメラと同じ音をPocket 2にも入れることができるようになるので、例えば出演者に持たせたPocket 2とENGの画の同期を音声で取ることができるようになる。ディレクターがサブカメラ的に回している場合も、複数の演者の音声がミックスアウトされてPocket 2に入るので、編集でも扱いやすくなる。
ミキサーのサブアウトやイヤホンアウトをワイヤレスマイクに入れて、Pocket 2 へ飛ばす
「ワイヤレスマイクトランスミッター」の電波の飛距離は、住宅街の路上でも20mほどは安定して飛んでいた。ロケ集団から少し離れた所から撮影していても、音声は十分届けられるわけだ。
1つ残念なことを挙げれば、「Do-It-Allハンドル」に備わっているイヤフォンアウトからはライブモニタリングができない点だ。つまり、ワイヤレスマイクなどから来ている音を、リアルタイムで聞くことができないのだ。現状、イヤフォンは収録済みの動画クリップを再生するときにのみ使えるようだ。ワイヤレスマイクで音声をモニタリングできないのは、ちょっと不安な部分がある。
Do-It-Allハンドルのオーディオ端子。イヤフォンでライブモニタリングできないのが残念だ
私の使い方で言えば、最悪音が割れていても飛んでいても、メインの音はENGカメラに収録されているので、大丈夫と言えば大丈夫なのだが、収録時に音がちゃんと来ているかの簡単な確認作業もできないのは、仕事道具としては物足りない。この点は改善できるなら改善してほしい点だ。
あと、話は多少前後するが、「Pocket 2」+「Do-It-Allハンドル」は必須仕様だった。三脚ネジ穴・スマホの接続・イヤフォンアウトなどの機能面の他に、Pocket 2の持ちやすさを改善してくれる。とにかく、標準状態のPocket 2は小さくて、指で握り込める場所が少ない。特に手の大きな男性ならなおさらだ。
安定してホールドするためにも、「Do-It-Allハンドル」を接続してグリップ面積を増やしてやると大変に持ちやすく、安心できた。他の機能の利用頻度から考えても、「Do-It-Allハンドル」を付けた状態が、私が使い場合は標準状態になりそうだ。
男性が持つ場合は「Do-It-Allハンドル」を取り付けた長さがちょうど良い
まとめ
Pocket 2は、期待以上に使いシロのあるガジェットだと感じた。個人ユースならもちろんメインカメラとして使っても良い性能だし、仕事の中で使うサブ機としては、そのインテリジェントな機能を信用して、Pocket 2に仕事を任せておいても大丈夫だという安心感を持てた。
こういった民生機的なガジェットは、如何にオート機能を上手く活用するかが仕事で使えるかどうかの肝になるのだが、Pocket 2のオート機能は大変スマートで、取り扱いに煩わしさがなく、画の仕上がりに失敗が少ないのが高く評価できる。
さらに、ワイヤレスマイクと連携できることで、Pocket 2の活躍のフィールドは、様々に考えられると思う。ここからは使う側のアイデア勝負で、上手く使いこなせば現場や編集を楽にすることができそうだ。
「Do-It-Allハンドル」があることで、Pocket 2の利便性やハンドリングは更に向上するため、最初の方でも述べたように、やはり「DJI Pocket 2 Creatorコンボ」が仕事に使う上では必須だろう。あとは、NDフィルターセットなども用意されているようなので、映像の品位をコントロールして向上させていくならば持っておきたいセットだ。
そして、妙に気に⼊ってしまった「カバー」。細かなアクセサリーが収納できてカメラ本体を守ってくれるこのアイテムは「気楽にPocket 2を持ち歩く」「様々な現場にPocket 2を持って行く」という点に大きく貢献していると思う。
1つ残念な点があるとすれば、スマホアダプターを本体のユニバーサルポートに取り付けている時に、取り外している「ミニ操作スティック」がカバー内に収納できないことだ。カバー内には「Lightning」と「USB-C」用のスマホアダプターが収納できるスペースがあるが、ワンユーザーなら必要なアダプターはどちらか1つなので、その代わりに「ミニ操作スティック」も収納できるスペースや仕組みを用意して欲しかった。もちろん、「ミニ操作スティック」をPocket 2本体に取り付けている場合は、「カバー」へそのまま収納可能になっている。
ということで、ENGの現場で使うPocket 2という視点で評価をしてみた。また、個人的にも凄く欲しいガジェットだ(笑)。今回は記事内でフォーカスしていないが、スマホを使ったAI編集やSTORYモードはプライベートで楽しむには面白い機能だった。
タイムコード・ラボ代表。Next-Zero.com管理人。バラエティーから報道や空撮まで幅広い番組撮影をこなすTVカメラマンであり、ダンスイベントからe-ラーニング収録まで請け負う街のビデオ屋さん。イージス艦CICから幼稚園のおゆうぎ会まで、フィールドは問わない。