はじめまして。Web用空撮動画を作成したり、ドローンの活用をテーマにしたセミナー等の講師や研修をさせていただいている田口厚です。最近では、中小企業の社長様方からドローンを活用したビジネスについてご相談を受けることも増えており、中小企業のドローンに対する興味、またはマネタイズの苦心を肌に感じるようになりました。このコラムでは、これからドローンを自社事業やプロジェクトに活用したいとお考えの方々に向けて、自分が経験してきたドローンを活用したプロジェクトの構築やマネタイズの試行錯誤したことをご紹介していきたいと思います。
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改正航空法直前の決断!
今回ご紹介するのは、史文社の代表、藤城徹さんのプロジェクト。史文社は「歴史代理店」として、歴史に関する調査、講師の派遣、イベントの催行などの業務を行っているそうです。ビジネス誌において戦国大名・真田氏を取り上げるとのことで、資料として真田氏にゆかりのあるお城を空撮できないかとのご相談でした。また、こういった企画を別の大名や武将をテーマに展開することも計画中とのお話で、運用のマニュアル化もお手伝いさせていただきました。
藤城さんからご相談をいただいたのは11月。内容が具体的になったのは11月下旬でした。改正航空法の施行は12月10日。当初の予定では施行前の12月初旬に撮影を決行しようと相談を進めていましたが、かえって飛行申請・承認許可を取ってマニュアル化しよう…ということになり、施行直後の12月中旬に撮影を決行いたしました。
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まずは膨大な資料に目を通す
申請書のフォーマットには以前から目を通していたものの、その書き方や意図まではわからず、そのままにしておりました…。しかも、「少なくても飛行開始予定日の10日前までに申請書を郵送等する必要がある」ということで、まずは申請の全体像をつかむために、大急ぎで公表されている資料に目を通します。
まずは全体像をつかむために、記入例を確認します。
見ていただくとわかりますが、1ページ目に国交省の無人機許可・承認担当のメールアドレスがありますね。報道や発表等では郵送が前提というイメージだったので、郵送のやり取りで内容を調整しながら申請するのは絶望的なスケジュール感を感じていたのですが、メールで申請書の内容を無人機許可・承認担当の方と調整して、申請書を最終的に郵送するというフローになっていました。これならば間に合いそうです。
次に、申請書の各項目の意図を確認します。申請書の様式自体は4ページしか無いシンプルなものなのですが、別添資料として飛行計画書や操縦者の飛行履歴、飛行マニュアル等を作成しなくてはなりません。結局、自分の申請書類は30ページほどになりました。
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ポイントは恐らくマニュアルの記載内容です。マニュアルの構造は、まず何らかの飛行禁止区域や禁止された飛行方法をする際に基本となるマニュアル内容(仮にAとします)を作り、それに加える形で該当する禁止項目に対する安全対策を考慮したマニュアル(B)を作る…というイメージです。飛行禁止区域や禁止された飛行方法はいくつもありますので、Bは目視外飛行の安全対策をまとめたB-1、夜間飛行の安全対策をまとめたB-2…というように複数のパターンができます。最終的には「A+B-1+B4」といったマニュアルが一冊できるわけですね。たいへんな作業なように見えますが、AやBといった各モジュールを作っておけば、「今回は目視外飛行と物件投下が禁止事項にかかるからA+B-1+B5だな」といったように、飛行させる状況に応じて比較的簡単にマニュアルを制作することができます。
今回のプロジェクトは、人口密集地区にある城跡に対して、昼間に目視で飛行させて撮影するという内容でしたので、
- 無人航空機の飛行の許可が必要となる空域について
◆人又は家屋の密集している地域の上空
(C)平成22年の国勢調査の結果による人口集中地区の上空
※こちらのサイトで人口集中地区を確認することができます。
▶安全飛行 フライングエリアの制限(DJI JAPAN) - 無人航空機の飛行の方法
[3]人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること
の2点に対する飛行許可・承認申請書を作成いたしました。
申請書を作成して国交省に送ってみた
12月4日 8:35
さっそく申請書一式を国交省の無人機許可・承認担当にメールでお送りしました。飛行開始予定日までちょうど10日前。郵送してから10日必要なのだろうか?土日は10日に含まれるのだろうか?などと心配しながら数日後に来るであろう国交省からのお返事を待っていると…。
12月4日 15:42
来ました!なんと返信まで7時間です!しかも、記載方法の修正から内容の補足指示まで10項目、事細かにご指示いただいていました。少ない人数で大量の申請書に目を通さなくてはならない状況で、まさに神対応!
ご指摘いただいた内容を見ると、書かなくて良いところに記載をしてしまったり、逆に書かなくてはならないところを空欄にしてしまったりしたところがいくつかあったようです。また、マニュアルの訓練欄に具体的な訓練用ドローンやシミュレーターの機種名を入れたのですが、全て別添資料を求められました。ちょっと具体名を書いたことを少し後悔しつつ、追加資料を準備します。
国交省の神対応は続く
12月7日 5:35
土日で申請書を修正し、月曜日早朝に再度国交省に送りました。これなら間に合うかもしれない。国交省の対応に感謝しつつお返事を待っていると…。
12月8日 0:20
お返事が来ました!しかも今度は少しだけ日付が変わった深夜に。今度は細かい文言の修正中心に4項目の修正のご指示。内容を見ると、どうやらマニュアルの文言は記載例に従ったほうが良さそうです。オリジナリティを出そうと文言を工夫したのですが、そういった工夫はいらない模様。
12月8日 12:53
いただいた修正を反映させて再度国交省に申請書データを送信。飛行開始予定日まで7日を切った状態で、まだ修正をしていてはやっぱり間に合わないかもしれない、と思いつつお返事をお待ちしていると…。
12月8日 18:51
6時間後に来ました!修正が自分の記載ミスで3箇所も。国交省の担当様、申し訳ございません。
12月8日 22:34
追加で記載ミス修正のご連絡。通し番号がズレていました。Wordのせい、いや、自分のミスです。国交省の担当様、夜遅くに申し訳ございません。赤い目でCoffeeを飲みながら書類をチェックしている姿が想像できてお詫びのしようもありません。
12月8日 23:08
いただいた修正指示を反映させて再度国交省に申請書データを送信。さて、もう飛行開始予定日まで5日となりました。これで明日以降、書類を送付したとしても正式な承認が出るのはいつになるのか…。
12月9日 20:35
「許可・承認申請につきまして、部内で確認し、許可・承認することとなりました」とご連絡が来ました!なんと、メールのやり取りで許可が出て、許可証のコピーがPDFで送られてくるのですね。これで週明け14日の飛行に間に合わせることができます。
12月10日の改正航空法施行初日に国交省で116件の飛行申請を許可したとのこと。担当職員のみなさまは、それこそ寝ずに職務に当たられたのだと思います。この場を借りて感謝いたします。
また、同じく飛行申請許可を得た複数の知人と情報交換をしたところ、担当官によって対応に差があるのではないかと思われる場面があったり、申請する側に法律の理解が足りないところがあったりしたのではないかとの懸念が出ました。審査する側も、また申請する側も情報を共有し、レベルをアップさせていくことも必要なのかもしれません。
※12月10日前後の状況です。現在(12月24日)は「申請相談が非常に多く寄せられており、返信までに最大で1~2週間程度、担当者とのメールのやりとりを経て申請書が出来た段階から、正式な審査を含む当方の内部手続きに10開庁日の期間を頂いています。」とのことです。はやめに申請書を提出することをお薦めいたします。