優勝は、DMM RAIDEN RACING所属の高校生レーサー鈴木匠選手
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日本最大屋内ドローンレース「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」開催!
3月31日、日本最大級※の屋内ドローンレース「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」が、幕張メッセで開催された。優勝は、世界大会出場経験もあるDMM RAIDEN RACING所属の鈴木匠選手。同大会は、DRONE SPORTS、NTTドコモ、NTTぷららが共同主催。国内トップレベルを誇る8名の選手が出場し、レース解説はRAIDEN RACINGの大崎裕輝氏が務めた。
※屋内でのドローンレースの会場面積および放送媒体数において。2020年3月23日現在、DRONE SPORTS、NTTドコモ、NTTぷらら調べ
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左から、小松良誠選手、岡聖章選手、山田開人選手、齊藤三佳選手、鈴木匠選手、Saqoosha選手、高野奏多選手、上関風雅選手
当日は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「無観客」で実施。大会前日には急遽、Ameba TV生放送のキャンセル、各種放送の延期が決定される、異例の開催となった。しかし選手達はフルアクセルで、熾烈なレースを繰り広げ、1st ROUNDから“予想外”の展開に。本稿では、1st ROUND、SEMI FINAL、FINALの見どころを凝縮してお伝えする。
1st ROUNDから大波乱、“予想外”のレース展開に
「ザ・ナチュラル」小松選手(左)と「変幻自在のワンダーボーイ」高野選手(右)
レースは全戦、1on1のガチンコ勝負。1試合最大3ヒート、2ヒート先取で勝ち上がる。1st ROUNDでは4試合が行われた。初戦は、小松良誠選手VS高野奏多選手。2人は、同時期に同じ場所でドローンを始めた戦友だ。スタートダッシュが得意な小松選手が、コーナリングが得意だという高野選手を、2:1で下した。
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「FLYING BEAR」Saqoosha(さくーしゃ)選手(左)と同大会唯一のプロレーサー「孤高のパイロット」山田選手(右)
次に、Saqoosha選手VS山田開人選手。抑え気味で細かく回るか、速度は落とさず突っ込んで大きく回るか、攻め方の異なる2人が大接近のレースを展開。第3ヒートは両選手ともクラッシュせず、お互いが相手につられてスピードをぐんぐん加速。最後は山田選手がプロの意地を見せて勝利した。
「空飛ぶプリンセス」齋藤選手(左)と「未完のプリンス」鈴木選手(右)
齊藤三佳選手VS鈴木匠選手の対戦は、鈴木選手が2ヒート連取で勝利。ドイツ、ベルギー、スイスと渡り歩いてきた実力の差を見せつける結果となったが、齊藤選手は大人でもドローンレース歴僅か1年で「ここまで飛ばせる」というポテンシャルを印象付けた。
「日本最速の天才」岡選手(左)と同大会最年少の「ニュージェネレーション・モンスター」上関選手(右)
1st ROUNDの最終戦は、岡聖章選手VS上関風雅選手。まさか初戦で当たるとは…。岡選手は、上関選手がドローンを始めたときの師匠。昨年秋に東京モーターショーで開催された「Drone Tokyo 2019」決勝戦では、上関選手が岡選手を抑えてトップを走るも、ゴール直前のクラッシュで岡選手に抜かれて涙を飲んだ“因縁”もある。今回も、第1ヒートのスタートからほぼ互角。両選手クラッシュというドラマを経て、第3ヒートは上関選手が僅差で先にゴールし、上関選手が「岡選手に勝つ」という大きな目標を達成した。同大会の本命だった岡選手は、1st ROUND敗退したが、同大会最年少レーサーの成長には感慨深そうだった。
上関風雅選手が第3ヒートを制し、2:1で岡選手を下した“決定的瞬間”
1st ROUNDを勝ち抜いたのは、若手4選手だった
デッドヒートがスピードを加速したことを示す、1st ROUND終了後のタイムランキング
僅差の接近戦が続き、一瞬の隙が勝敗を分ける
同大会の機体は、選手1人に6台ずつ用意された
同大会では、全選手が同一仕様の機体を使用した。5インチの一般的なレーシングドローンに比べ、機体サイズ約が1.7倍大きく、スピードが出にくい。このため、高輝度LEDの効果もあり、観客からの識別性が上がり、レースのエンターテインメント性は向上する。選手にとっては、スタートダッシュをかけすぎると機体が前方に傾き下降するため床にクラッシュしやすい“扱いづらさ”があったようだが、世界大会の標準に近い機体でのレース経験は、きっと今後につながるはずだ。
スタート直後の機体。重量は850g(フレーム、プロペラ、キャノピー、バッテリー、LED照明すべて含めて)。DRONE SPORTS開発の機体が採用され、選手それぞれの色にカラーリングされた特別仕様
SEMI FINALでも、鈴木選手が上関選手との第1ヒートで、フルアクセルでスタートし、機体の角度が付きすぎて体勢を崩すアクシデントがあった。ゴール直前での逆転勝利や、機体同士のクラッシュで復活できないなど、見応え抜群の熾烈な接近戦が繰り広げられた。
レース外周にはゲートとフラッグが設置されており、コーナリングではアグレッシブな追い抜きやクラッシュが続出した
機体の性能が同一であるがゆえ、いかに効率よくコースを周るか、選手の操縦技術がものをいう。接近戦になればなるほどスピードアップし、一瞬の隙が逆転劇を生む。機体やコースにも慣れ、選手たちの緊張もほぐれたSEMI FINALでは、鈴木選手と小松選手が勝ち抜いた。
FINALは「ほぼ同時の逆転ゴール」、両選手の笑顔が炸裂
FINALは、小松選手(左)と鈴木選手(右)の「高校生対決」
FINALの第1ヒートは、SPAIAゲートを折り返した直後両機体がもつれあってクラッシュし、両選手とも復活できないアクシデントが勃発。審議の結果、ReRun(再走)となったため、第4ヒートまで行われた。第2ヒートは最後のCRTMゲートで鈴木選手が抜き返して勝利。一方、第3ヒートは競合い続く大接戦の末、小松選手が逃げ切った。ゴールの直後、両選手からはすでに笑顔が弾けていた。
第2ヒート、第3ヒートとも互角の競合いが続き、両選手とも勝負を心から楽しんでいた
1対1で迎えた、第4ヒート。まさかの逆転劇が起こる。僅差でリードし続けた小松選手を、なんと最終ゲートで鈴木選手が抜き去ったのだ。FPVゴーグルを外した瞬間に、両選手の笑顔が炸裂し、なんとも清々しい幕引きとなった。
「信じられない」といった様子で頭をかかえる小松選手(左)と、逆転優勝にガッツポーズの鈴木選手(右)
将来的には5G活用にも期待
同大会のテーマは、「LIMITLESS FLIGHT(リミットレス・フライト)」。年齢や性別を超えて誰もがヒーローになれる、ドローンレースの可能性を、8名の選手全員が体現したのではないだろうか。
機体の仕様はもちろん、プロジェクションマッピングなど最先端のデジタルアートの活用、レーサー1人ひとりのキャッチコピーなど、エンターテインメント性も抜群だった(個人的には、Saqoosha選手の「誰よりも世界を知る中年熊」が、その装いと相まってグッときた)。生放送されていればSNS拡散などで話題を呼び、スリル満点のドローンレースの魅力が、国内でももっと広まったはずだ。
3月25日、日本国内でも5G商用サービスが開始した。技術開発や電波法など超えるべきハードルは多々あるが、低遅延・大容量高速という特徴を持つ5Gの通信環境とドローンレースは非常に相性がよい。
主催のNTTドコモ スマートライフ推進部 スポーツ&ライブビジネス推進室 室長 馬場浩史氏は、Drone.jp独自インタビューで、「数年はかかる」と前置きしつつも、「将来的には、5Gの力でいまの電波法の制約の無いなかで、ドローンレースができるところを目指したい」と談話した。「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP」は、ドローンレースという新たなスポーツエンターテインメントの、これからの発展に大いに期待が膨らむイベントであった。
なおレースの模様本編は現在「SUPER DRONE CHAMPIONSHIP(AbemaTV)」として全編配信中だ。ぜひこの興奮を味わって欲しい!