株式会社センシンロボティクスは、国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下:JAMSTEC)が行う植生調査において、ドローンによる全自動陸域生態系調査の実証実験を行った。これにより、人のアクセスが困難な場所での定点観測における活用に有効であることが確認され、今後の研究活動の可能性につながる結果が得られたという。
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JAMSTECでは、2019年度より新しい地球表層観測手法の研究開発を目標に、ドローンを活用した大気組成・海洋・植生の地球表層の環境影響情報の導出に着手している。省力化・低コスト化を志向した観測の自動化について検討を進めた結果、センシンロボティクスのドローンを自動飛行させる「SENSYN DRONE HUB」無人運用システムに着目。SENSYN DRONE HUBは、陸域生態系調査において、植物の季節変化(開花・開葉・紅葉・落葉)や動物の生態などを省力的に定点観察可能にする利点があるという。
「SENSYN DRONE HUB」
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■実験の内容
ドローン観測による植物季節に着目した樹種判別を目的に、ENSYN DRONE HUBを用いて、国指定重要文化財である夏島貝塚上空から全自動で植生調査を行った。
(1)ルート設定した上空をドローンが自動飛行し、対象物の直上から画像撮影を行い、画像データを取得できるか確認
ルート設定画面
(2)「SENSYN FLIGHT CORE」上でスケジューリング登録を実施し、設定時間に全自動航行による画像データ取得ができるか確認
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自動で航行ルートを算出
ドローンは、定時刻になるとプラットフォームからドローンが自動的に離陸し、事前にシステム上で指定したルート通りの正確な飛行を実行した後、完全自動で精密な自動着陸を実行する事を確認した。
同実証実験ではオペレーターの目視可能範囲での飛行検証を行ったが、離陸から着陸までのすべてのミッションを作業員の介在なく実施出来る事が確認でき、ドローンの無人運用に足る必要機能を持ち合わせている事を確認。将来的な完全自動運用に向けて、効果測定・実証実験を継続していく予定だとしている。
夏島貝塚におけるオルソモザイク画像。80%のオーバーラップで撮影した画像をAgisoft社のPhotoScanを用いて合成
同実証実験では下記のことが分かった。(1)貝塚山頂付近に戦時中に空軍基地として使われていたと思われる構造物の土台があることを発見(右側)。(2)タブノキ(常緑広葉樹)やエノキ(落葉広葉樹)などの樹種分布
JAMSTECの永井信氏は次のようにコメントしている。
地球表層システム研究センターでは、気候変動や人間活動に伴う地球環境変動の理解の深化と課題解決に貢献すべく、海・大気・陸を巡る炭素・窒素・エアロゾルなどの物質の起源や循環、それらと関連する海洋・陸上生態系の機能やサービス・生物多様性を、現場・衛星観測とモデリングの統合的な解析・評価から明らかにすることを目的としています。
今回の実証実験を通じ、「SENSYN DRONE HUB」が可能とする自動充電機能・スケジュール機能を利用した完全自動運用による観測フライトは、リピート観測を省力的に実現する上で非常に有用であり、従来までのある日ある時の観測で取得できる“スナップショット”ではなく、リピート観測による“体系的な”データの取得に向け、自然科学研究におけるドローン活用の可能性を大きく拓くものであると考えております。
今後の実証実験の繰り返しと、ソフトウェアとハードウェアの両面における技術発展により、さらに実用化に向けた安全かつ柔軟性の高いシステムの開発が進むことを強く期待いたします。
■実証実験概要
- 実施日時:2019年12月24、25日
- 実施場所:国立研究開発法人海洋研究開発機構 横須賀本部夏島貝塚隣り 資材置き場(夏島町20-1)及び、夏島貝塚の当機構担当者指定地区上