空撮時の実践的データを公開
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今回実際の撮影現場にてSamsung T5とX5を使用し、従来のSSDやHDDに比べ転送速度がどれほど向上するかの検証を行った。使用した撮影機材はInspire 2とDJI Zenmuse X7(以下:X7カメラ)の組み合わせで4K~6K 30fps CinemaDNGのRAWで撮影した。
またカードリーダーはThunderbult 3対応のDJI CINESSDステーションカードリーダーと従来のUSB3.0対応のリーダーを使用し、転送速度の違いを検証している。
CinemaDNGのRAWは収録データ1秒につき、数十ファイルが生成されるため1日中撮影をすると10万を超えるファイルが生成される。このためCinemaDNGのデータをバックアップする場合ファイル転送速度が次第に落ちてしまい、HDDの場合、額面スペックを大幅に割り込んで一秒間に30MB/sまで転送速度が落ち込む事もある。
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HDDを空撮のデータバックアップで使用する場合、データ転送に非常に長時間かかり次の撮影に支障が出る場合もある。このため今回の実験を通じてSamsung SSDでどれほどの時間の節約ができるか実践的なデータを共有したい。
HDD
一般的に市販されているHDDの転送速度は100MB/s程度である。今回Blackmagic Disk Speed Testを使用して実際の速度を計測したが書き込み速度は88.3MB/sであった。
今回転送したデータは数分程度の非常に短い撮影データで、データサイズは162.26GB、ファイル数は23,463ファイルである。1日中撮影するとX7カメラのデータは1TB前後になるため、撮影現場によってはこの検証実験の5倍以上の時間がかかると考えていただきたい。
HDDを使ってファイルをコピーした際の転送時間は32分と表示された。しかし、HDDをCinemaDNG連番のコピーに使用すると次第に転送速度が低下していくので、実際のバックアップ時間は40分ほどであった。実測のデータ転送速度は約70MB/sであった。
ファイル数が大きくなるほどHDDは速度の低下が激しくなるため、1TBの空撮データのバックアップだと5時間前後時間がかかると想定した方が良い。
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■Samsung 860 EVO+USB3.0リーダー
HDDの次に検証したのは弊社で従来から導入しているPC用のSSD、Samsung 860 EVOとUSB3.0リーダーでの転送速度である。Blackmagic Disk Speed TestではHDDに比べると4倍以上の478.4MB/sの書き込みスピードを計測した。
検証データを使用したバックアップの時間は約5分である。しかしHDDと違い、データ転送速度の低下はあまりなく、初期表示通り5分程度でバックアップが完了した。HDDと比べても8倍前後の転送速度があり、1TBのデータでも約30分でバックアップが可能である。
転送速度実験:CineSSD→860 EVO
■Samsung T5+Thunderbolt 3カードリーダー
Samsung T5は非常にコンパクトで耐久性に優れたメディアである
次に検証したのがSamsung T5とThunderbolt 3カードリーダーである。T5の転送速度は860 EVOとほぼ同様の482.8MB/sであったが、サイズがとても小型で重さはわずか51gしかなく、名刺よりも小さい。また保存したデータを暗号化できるためデータ漏洩があってはならない企業PV撮影やCM、映画などの撮影で非常に有利である。
気になる転送速度だが、カードリーダーを交換したため若干転送速度が上がり5分半でデータのバックアップが完了した。CinemaDNG連番のためカタログスペックよりわずかに転送速度は低下したものの、それでも380MB/sを超える速度でデータの転送を行なっており、HDDの5倍以上のスピードでデータの転送を行なっていた。
転送速度実験:CineSSD→T5
■Samsung X5+Thunderbolt 3カードリーダー
Samsung X5はThunderbolt3に対応しており、従来のSSDの4倍のスピードでデータ転送可能だ
Samsung X5はT5や860 EVOと違い、Thunderbolt 3に完全対応しておりカタログ上のデータ転送速度は2300MB/sと別次元の速さである。実際にディスクスピードを計測したが書き込み速度は1928MB/sと従来のSSDの4倍以上、HDDと比べても20倍以上の速度を発揮した。この速度性能の差はデータのバックアップ時間に如実に反映され、X5使用時のバックアップ時間はわずか2分半とHDDの20倍、860 EVOの2倍に達した。
転送速度実験:CineSSD→X5
1TBのバックアップでもわずか10分程度で完了可能で、HDDとは比較にならないほど高速でデータバックアップが可能である。なお1つ注意点としてはカードリーダーがThunderbolt 3対応であることが必須条件である。通常のUSB3.0のカードリーダーを使用するとカードリーダーがボトルネックとなり転送速度はT5や860 EVOと大差なくなるので注意が必要だ。
データを高速で転送するにはThunderbolt3対応カードリーダーも必須である
どのSSDを買うべきか?
DJI製のRAWカメラはCinemaDNG連番形式を採用しているのでHDDを使ったバックアップ体制は時間管理の観点からも不適当である。RAWで空撮をするのであればSSDでのバックアップは常識といっても過言ではない。
問題はどのSSDが良いかという点である。弊社が使用しているPC系の2TB SSDはエンクロージャーを入れて概ね45,000円ぐらいである。実売価格が5万円前後のT5に比べ若干のコストメリットはあるが、サイズがやや大型でデータを暗号化する機能が入っていない。X7カメラを使ってRAW撮影をする案件はCMなどの大型案件が多いため、暗号化処理ができるT5の方が現場によっては望ましいと考えられる。
一方X5は、データ転送速度では他を圧倒する能力を持っているが値段が15万円前後と従来品と比べて高額である。X5は大量のデータを現場でバックアップするユーザーや、データのバックアップに加えて、現場編集用のSSDとして使うユーザーには良いのではないかと思われる。
いずれのモデルにせよ、DJI製RAWカメラとSamsung SSDの親和性は高い。HDDのバックアップ体制では1本12万円近くするDJI CINESSDを複数本用意しないとデータコピーが間に合わない場合もあるが、Samsung SSDがあれば2本もCineSSDを用意しておけばデータをバックアップしながら現場を十分に回せる。
Samsung SSDを導入すれば、コストも削減でき、データコピーを徹夜で行なって寝不足で翌日の空撮を行う心配もない。これからRAWで空撮を考えているユーザーにはドローンやカメラなどのスペックもあるが、ぜひSSDを使ったバックアップ体制も考慮に入れて機材を導入していただきたいと考える。