LVCCサウスホールのドローン出展エリア
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CESにおけるドローンのポジションは安定期に入ったと言えそうだ。出展数は全体で70程度と数こそは少ないものの注目カテゴリの一つにあげられ、LVCCのサウスホールの出展エリアは多くの来場者を集めていた。目立つのはDJI、AEE、Yuneec、UVify、PowerVisonなどの常連ブースで、何のためにドローンを使うのか用途が明確になり、展示もそれにあわせて細分化している印象だ。世界各国でドローンをテーマにしたカンファレンスや展示会が増えており、CESは革新的なアイデアや技術を発表する場というより売れる製品を見せてビジネスにつなげる場になっている。
CESにおいてドローン市場は安定期に入った
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たとえば昨年よりも出展が増えていた水中ドローンは、今のところ水中で利用する際の制約が無くコントロールもしやすいので、海のレジャーやボートフィッシングのお供として売り出そうという狙いが見える。既存のドローンは安定した飛行能力でコントロールしやすく、4Kカメラ搭載が標準機能になりつつある。トイドローンは減って、広い場所へ持ち運んで本格的に飛ばすタイプや、カスタマイズできるタイプの割合が増え、実際に機体を飛ばして試せるところも増えていた。
水中ドローンは出展が増えて価格も手ごろになっている
用途にあわせてカスタマイズできるドローンの展示も目立った
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ドローンの飛行性が安定し、カメラやセンサーの精度が上がった影響で探査ドローンがあちこちのブースで出展されていた。カリフォルニアのEwatt AerospaceはマルチローターとVTOLタイプで、いずれもオプションでカメラやセンサーを取り換えられる探査ドローンを出展している。McFLYはBaiduクラウドと連携して農作物の害虫被害を探査するドローンを開発し、今後中国で広く運用していくとしている。
EWATTはカメラ部分を交換できる探査ドローンを複数展示
McFLYはBaiduと共同で開発した農地探査用のドローンを出展していた
NASDAQにも上場している中国のECサイト京東商城(JD.COM)は巨大な倉庫内で製品をチェックするマルチロータータイプのドローンを開発。同社はAmazonと同じように商品管理と運搬ができる全自動ロボットを開発しており、ドローンと組み合わせて大量の商品管理をスムーズに行うのが狙いだ。探査ドローンは自動車や搬送トラックと組み合わせて運用するアイデアも以前からあり、連携する対象はこれからさらに広がりそうだ。
京東商城はロボットを組み合わせて巨大倉庫の商品管理を行う屋内ドローンを開発
実用化が急速に進むパッセンジャードローン
今年のCESもいろいろなドローンが出展されていたが、やはり注目しておきたいのはパッセンジャードローンの数々だろう。Bell Helicopterが出展した実機サイズのプロトタイプ機「Nexus」は、その巨大さとローター部分が動くというインパクトで人を運ぶドローンがいよいよ実用化に近付いていることを印象づけた。
昨年に引き続きBellの展示でパッセンジャードローンの注目度が大きく高まった
フランスのダッソー・システムズはパッセンジャードローンを設計できるシミュレーションシステムを体験できるVRデモと一緒に展示。ドローンそのものではなく、運用やコクピットのUIを提示することで、これから参入を進める企業に向けて自社のテクノロジーを売り込もうというわけだ。同社のブースでは物流システムもあわせて展示されており、ドローンマーケットとの関わりを強めているのがわかる。
ダッソー・システムズは機体の設計から運用を含めたシミュレーションシステムを提案
シミュレーションを元にしたモデル機
ブース紹介の動画
会場では空飛ぶ自動車の開発を進める有志団体CARTIVATORが開発を進めている「SKYDRIVE2020」の模型モデルも出展されていた。2020年にデモフライトを目指すという同機は、CESに展示されているパッセンジャードローンと比べて独特のデザインをしているせいか、本当に飛べるのか実感が湧きにくいが、実用化されれば確実に世界から注目を集めるのは間違いない。
アニメに登場しそうな独特なデザインをした「SKYDRIVE2020」
ドバイ警察が導入したことで話題になった一人乗りのHOVERSURFの「S3 2019 HOVERBIKE(ホバーバイク)」も会場に実機が出展されていた。4つのプロペラで5メートルの高さを最高時速96kmで移動できる機体は思ったより見た目がいかつい。プロペラ部分が低い位置でむき出しになっているのが安全性で気になるところだが、連続10~30分の飛行で2.5時間の充電が必要な運用機能とあわせて改善されていくことだろう。
想像以上にいかつい見た目のHOVERBIKEはドバイ警察で運用が進められている
スナックからゴルフバッグまで自走式ロボットのバリエーションが拡がる
ドローン技術を応用した自走式ロボットも市場を順調に拡げている。MITで開発されたコンピュータビジョンとロボティクス技術を元にRobby Technologiesが開発するRobby 2は2016年から行ってきた試験運用を成功させ、ペプシコと共同でスナック菓子やドリンクを届けるSnackbotを開発し、CESで披露した。安定した走行で段差も難なく乗り越え、雨の日や夜でも走行できる機能を持っている。フタの開け閉めはスマホで行い、取り出した商品はカメラで認識される。しばらくはまだプロモーションレベルでの運用が続きそうだが、製造コストが下がれば一気に普及するかもしれない。
Robby Technologiesとペプシコが共同開発したSnackbotがお披露目された
同じような商品を運ぶロボットは他にも会場でいくつか見かけた
キャディに替わってゴルフバッグを運んでくれるロボットも登場した。ROVERは人の動きにあわせて付いてくる自走式カートでイギリスの高級ゴルフクラブですでに使われている。価格は軽自動車並みで1度の充電で40ホールを回ることができる。個人で好きな時間にプレイしたいというニーズにあわせて開発され、利用者の評価は今のところ上々ということだ。
プレイヤーの後を自動で付いてくるゴルフカート
自律走行といえば電動車椅子のWHILLも自律走行モデルのプロトタイプを出展し、試乗を行っていた。衝突防止機能を備え、障害物を自動で回避しながら目的地へと移動する安定した動きを見せており、今のところ販売の予定はないというが、医療や介護施設のみならず一般にもニーズが高いと思われる製品だけにいち早い実用化を期待したいところだ。
電動車椅子WHILLの自律走行モデル
今年の出展内容を見る限り、来年のCESでドローンの展示規模が拡大するとは予想しにくいが、パッセンジャードローンを中心に高性能で安定した飛行能力を売りに、AIやロボティクス、自動運転技術とさらに密接に関連するテクノロジーをが出展されることに期待したい。