VTOL(Vertical Take-Off and Landing)の進化
ドローンが最も美しく見えるのは空を飛んでいる時よりも実は離着陸する時なのかもしれません。ふわりと浮かび上がるように飛び立つローター式ドローンもいいですが、垂直に離発着するVTOL(Vertical Take-Off and Landing)タイプの独特の離着陸シーンは、なかなか見とれるものがあります。
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VTOLタイプのドローンは滑走路を必要とせずどこからでも離発着できるのがポイントで、長距離を高速に飛べるよう固定翼が使われていたり、戦闘機のような設計になっていたり、独特のデザインをしているものが多かったりします。
たとえば、Amazonが宅配ドローンサービス「Prime Air」用にローター式とは別に開発しているVTOLタイプの機体は、3つのラインが平行に並んだようなユニークなデザインをしています。真ん中の本体に荷物を自動で詰め込み、両側のプロペラでふわりと浮きあがったあとは、尾翼に付いたプロペラで水平飛行できるようになっていて、すでに実機の試験飛行も行われています。
■Amazon
ユニークな形をしたAmazonのVTOLタイプ宅配ドローン
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水平に姿勢を保ったまま離着陸できるVTOLタイプは、飛行中もずっと安定姿勢を保てるので荷物を運ぶのに向いているのでしょう。国際輸送サービス企業のDHLもVTOLタイプの宅配ドローン「Parcelcopter」を独自に開発していますが、こちらはローター式に比べて輸送能力がパワーアップされているのが特徴です。
ただし設計は変わっていて、2016年の時点ではオスプレイのように離着陸と飛行時でローターの向きが変わるようなデザインでしたが、先日発表された最新のバージョン4.0機は、固定翼ドローンの四方向にローターが付いたハイブリッドデザインに変更されています。
デザインも特徴的で、DHLのコーポレートカラーのオレンジ色をベースにペイロードも含めて全体的に丸みがあるかわいらしいフォルムをしています。こちらも実機として開発済みで、アフリカの東部に医薬品を供給するプロジェクト「Deliver Future」で試用を開始したことが発表されています。
■DHL
DHLが発表した最新の「Parcelcopter」はハイブリッドにデザインを大幅に変更
こうしたユニークなデザインもいいですが、個人的には姿勢を垂直にしたまま飛べるVTOLタイプのドローンが気になるところだったりします。頭を上に向けて立ったままの姿勢からまっすぐ空に向かって飛び立ち、ある程度の高度になったところでふわりと姿勢を水平に変え、高速飛行できるというタイプです。
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目的地へ到達するとふたたび姿勢を垂直に戻して、離陸した時と同じ立った状態で地面に着陸するところまでのシークエンスは、いかにも自律飛行らしくて見ていると感動するものがあります。
ちょうど今年の夏に、神戸市を拠点に発足したドローンベンチャーの「SwiftXi」が行った、「Swift 020」と名付けられたVTOL機のデモンストレーション飛行を見る機会があったのですが、横長の機体が重さを感じさせずふわりと空中に浮かび上がり、空中でスムーズに姿勢を変形させるシーンを間近に見ていてかなり驚かされました。
とにかくあっという間に高度を上げ、空中ではかなり速いスピードで旋回能力も高く飛び回るのでグライダーのようにしかみえません。それでいて離陸したのと同じ位置にふたたび同じ姿勢で着陸することができ、かなり高度な飛行システムが搭載されているのがわかりました。
ちなみに「020」はシリコンバレーでF1マシンのエンジン開発に取り組んでいたヒロ松下氏の会社「スウィフト・エンジニアリング」で製造されたもので、松下氏はSwiftXiの会長も務めています。
■Swift 020
神戸でデモンストレーション飛行を披露した「Swift 020」
姿勢を垂直にして離発着するVTOL機は、他にも地上で安定しやすいXウィングのようなデザインや、全体的に軽量化された小型タイプなどもありますが、やはり水平に飛行する時のバランスが難しいせいか主流ではないところがあります。VTOLタイプそのものは、ローター式と固定翼式の両方の良さを備えていることから、開発はこれからも進みそう。さらに飛行システムが進化すれば、もっとユニークなデザインの機体が登場するかもしれません。
安定性のよいXウィングなデザインをしている「X CRAFT」のVTOL
カナダの「Wingtra」はまるっとしたデザインでスタンドが足ヒレのよう