これまで12年に渡って小型無人航空機用の水素推進システムを開発してきたHESエネルギー・システムズだが、この度世界初の地方向け水素電気旅客機「Element one(エレメント・ワン)」の開発計画を発表した。
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商業航空が始まって早一世紀、HESは様々なパートナーと手を組み、エアモビリティの新たな可能性を切り開くパイオニアを目指している。Element oneには静かでゼロカーボン、オンデマンド、分散型システムといった要素に加え、コスト面で地方コミュニティでの使用に適しているといった面もある。
ゼロエミッション航空機として開発された本機は、超軽量の水素燃料電池テクノロジーと分散型電気航空機推進システムを組み合わせている。現在のドローン規模システムに関しては特に変更はなく、HESの分散型システムはモジュール化やシステムの多層性による安全性の高さが特徴だ。
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Element oneは4人乗りで、燃料の水素が気体と液体、どちらの形態で貯蔵されるかによって飛行距離が500kmから5,000kmと大幅に変わる。これまでにあったどの電池式電気航空機よりも格段に性能が良く、小規模空港や飛行場間の緊密なネットワークを利用することで、小さな町や地方エリアを結ぶ新たな飛行ルートを開拓することができる。
シンガポール企業HESは、ここ1年で多数の仏スタートアップ企業や中小企業との協力体制を敷き、追い求める理想のElement one像を実現しようと拠点探しを続けてきた。例えばエアロスペース・バレーやトゥルースの航空研究開発拠点などがある。親会社のH3ダイナミクス・ホールディングスはフランス・シンガポール両国間でますます緊密になっていくテクノロジー協力体制の象徴であり、2018年を「イノベーションの1年」として位置付けている。
■水素電力は航空の未来を変える力を持つ
HESの創設者であるTaras Wankewycz氏は次のようにコメントしている。
Taras Wankewycz氏:分散型推進システムの下でHESの超軽量水素エネルギーを使用すれば、電池式電気航空機の限界を越えることができます。Element oneは電気航空機用の長距離燃料として再生可能水素エネルギーを活用する先駆けとなります。
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自動ナセル交換システムのおかげで、Element oneの燃料補充には10分もかからない。このシステムはAmazonやAlibabaが使用しているような無人搬送車(AGV)や自動倉庫業務などにも応用されている。
Element oneの新たな航空分野での活用を目指し、新規のビジネスを開拓に積極的なHESは、ゼロカーボン航空機開発ロードマップを仏企業Winglyのものに合わせた。Winglyは分散型地方航空用のフライト・シェアリングサービスを提供している。
Winglyの最高経営責任者(CEO)であるEmeric de Waziers氏は次のようにコメントしている。
Emeric de Waziers氏:我々は、パイロットや航空機利用者を含む20万人のコミュニティによって行われた何百万という目的地リサーチを分析し、中規模都市などの地域間を結ぶ交通手段の需要が非常に大きいことを突き止めました。
Element oneのようなエミッション・フリーの無人航空機と、Winglyのようなデジタルコミュニティベースのプラットフォーム、そして緊密な飛行場ネットワークを組み合わせれば、パラダイムを変えることができます。フランスには450を超える飛行場がありますが、この内定期便で結ばれているのはわずか1割です。我々は残り9割をつなげていくつもりです。
最初のプロトタイプ航空機は2025年に完成予定で、HESは航空と水素、両方のエコシステムに関わる、技術的・商業的共同事業体を形成しようとしている。