アルスエレクトロニカで見せるドローンの進化形
世界最大のメディアアートの祭典として30年以上続く「アルスエレクトロニカ・フェスティバル」(以下、アルスエレクトロニカ)は、最先端のテクノロジーとアートを融合させた様々な作品を紹介するイベントとして世界に知られています。オーストリアのリンツ市内中心地にある複数の建物を使って行われる展示は年々規模を拡大していて、今年は54カ国から1,300を越えるアーティストが12の会場で作品を出展。過去最大となる10万5000人が会場を訪れました。
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リンツの中心地全体を会場に開催されるアルスエレクトロニカ・フェスティバル。今年のテーマは「ERRORー不完全の芸術」
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作品に使われるテクノロジーは、AIやロボティクス、バイオテクノロジー、VRといった話題性の高いものが多く、ドローンも話題になりはじめた頃には作品として出展されています。むしろアルスエレクトロニカを通じて、ドローンに注目が集まるようになったと言っていいかもしれません。
夜空にドローンでアートを描く
LEDを搭載した数百台のドローンを使って空中にアートを描く「SPAXELS」は、アルスエレクトロニカが運営する「フューチャーラボ」が、IntelやIBMといった企業らと共に続けてきたプロジェクトの一つ。2012年に最初の作品を公開してから進化を続け、2016年にドナウ川の上空でブルックナーの生オーケストラにあわせて100台のドローンを飛ばした「Drone 100」は、フェスティバル最大の作品として注目を集め、世界中のニュースでも数多く取り上げられました。
プログラミング次第で複雑な演出も可能で、今や花火と並ぶ夜の定番エンタメとして頻繁に見かけるようになっています。
2012年からアート作品として進化を続けているSPAXELS
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プロジェクトの成果は「SPAXELS RESEARCH INITIATIVE (SRI)」に引き継がれ、様々な企業と共にドローンとアートのコラボレーションが研究されています。2016年にはNTTとの共同研究も始まり、その一つである「Swarm Arena」は今年のフェスティバルにも出展され、メイン会場のPOSTCITYで披露されたデモが注目を集めていました。
ドローンを使って空中と地上から立体的なアート作品を演出する「Swarm Arena」のプロトタイプたち
作品は、SRIが開発するSwarm OSを搭載したドローンと地上を走るグラウンドボットが連動して、LEDによる3Dアートを描き出すというもの。自律的な光のサインとしても機能し、人の動きにあわせてアニメーションを表示したり、誘導するサインにもなるというのがポイントです。
今回披露されたのはプロジェクトで動きや演出は正直ぎこちないものでしたが、NTTでは公共空間における「深い感動、新しい体験、おもてなし」の提供を目的に、2020年の実用化を目指しているとのこと。東京オリンピックでは、今よりさらに進化した作品が披露されるのを期待したいところです。
Swarm ArenaとグラウンドボットはNTTインターコミュニケーション・センター [ICC]で2018年10月13日~11月18日の期間で開催される特別展「“感じる”インフラストラクチャー 共感と多様性の社会に向けて」にて披露される予定です。
建築技術から派生するドローン
アルスエレクトロニカセンターの入口に展示されていた「Cyber Physical Macro Material」
もう一つの「Cyber Physical Macro Material」は、ドイツのシュトゥットガルト大学で建築技術を研究するITECHの学生によるもので、太陽の移動にあわせて同じ場所に陰ができるようにするインテリジェントなサンシェードをドローンで作るというユニークな作品です。ポイントはドローンが運ぶシェードのデザインで、ダイヤ型をした軽量なカーボンファイバー性のシェードは、シンプルながら組み合わせによってアートのような演出が可能です。
独特な形をしたシェードパーツ
シェードの近くにいる人の位置を自動でセンシングして、せっせとシェードを移動させる姿もどこかユーモラスで、そうした動きもあわせて設計されたというアイデアが高く評価されていました。
シェードの移動や組み合わせはすべてドローンを使って自律的に行われる
アルスエレクトロニカではフェスティバルに出展された作品のうち、公共性や社会性の高いものを常設の「アルスエレクトロニカ・センター」で展示しています。それらの作品はアートとして、また世界を変えるアイデアとしても評価され、社会に影響を与える存在になっています。
いち早くドローンを評価してきたアルスエレクトロニカで、これからもどんな作品が登場するのか楽しみなところです。