西日本最大の農業総合展「第2回 関西農業ワールド」がインテックス大阪で5月9日から3日間開催され、今年も農業用ドローンの展示が注目を集めていた。ポイントは農作業を軽減するためにいかに自動化=自律化をすすめるかで、そのための飛行しシステム開発や機体の改良、オプションによるサポートに力を入れる動きが目立った。
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■mazex
農薬散布用ドローンの飛助シリーズを開発しているmazex(マゼックス)の「飛助DX」(定価99.8万円)は、10Lの農薬や肥料を散布できるタンクを持つクワッドロータータイプのドローン。24kgと軽量ながら安定飛行が可能で1回あたり1ヘクタール以上散布できる。
2つのポンプから前後それぞれのノズルを使ってムラなく薬剤を噴霧できるよう工夫されていて、AからB地点を設定するとその間を自動で散布する自律散布システムモードも搭載されている。飛行中はLEDを点滅させ、使用しない時はアームの部分を折り畳んで格納できる。
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あわせて展示されていた「飛助MG」は基本機能は飛助DXとほぼ同じで、農林水産航空協会の認定受けているという違いがある。ドローンでの散布作業に協会の認定が必須というわけではないが、ドローンを運用するにあたり信頼性の評価基準として認定を求めるユーザーの声に対応して発売している。ちなみに現在認定を受けているドローンメーカーは7社で、うち自社で機体を開発しているメーカーはmazexを含め4社とのことだ。
飛助DXより狭い範囲で使用するために開発された「飛助III」(定価58.8万円)は5Lのタンクを備え、5分で50〜60aの広さを散布できる。軽量な分だけ機動性があり、モーターの冷却効果や散布ノズルも工夫されている。また、同じ機体で延線・架線作業を行う「延助」や練習用ドローンも発売している。シリーズの発売価格にはいずれも機体以外にコントローラやバッテリー、急速充電器などが含まれている。
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■XAIRCRAFT
農薬散布用ドローンはいかにムラ無く効率良く散布作業を行えるかがポイントで、XAIRCRAFTでは農薬散布のための完全自律システムの開発に力を入れている。今回、Pシリーズ機とあわせて展示された「Pilot Phone」は、散布する範囲をスマホ画面で指定、操作でき、最大8機まで同時にコントロールできる。
完全自律といいながらも初期設定がかなり面倒だった点の改善にも力を入れており、散布範囲を測量できる専用のドローンを7月ごろ目指して開発中としている。機体は展示されていなかったが開発はすでに終わっており、RTK(リアルタイムキネマティック)ポジショニングシステムと連動して使えるよう調整を進めている。価格はシステムも含めてトータルで2〜300万円となるため、レンタルでの運用も検討中とのこだ。
■OPTiM
OPTiMではドローンをIoT化し、クラウドとつないでAI処理を行うスマート農業ソリューションを展示。現在、テスト運用中の2機のドローンと活用事例をあわせて展示していた。
OPTiM Eagleと名付けられたマルチコプタータイプのドローンは、佐賀市の田園で米の病虫害の検知と北海道の大豆畑で農薬散布作業をAIで適切にコントロールする実証実験を行っているところで、いずれも効果が確認されているという。固定翼のOPTiM Hawlkはより広い農地を持つエリアでの実証実験を行っており、主に農地や漁場の監視などを行っている。いずれも現時点ではAIを利用するためのデータがまだ十分でないため、年内は農家から協力を得ながら運用ケースを増やし、それを元に来年からサービス開始を目指している。
さらに画像解析システムで農産物を監視できる自走式ドローンも開発。OPTiM Crawlerはハウス栽培している農作物の個数を数えたり熟度判定などをパノラマカメラの映像を解析して行うハウス情報管理サービスとあわせて活用する。ドローンに関しては用途にあわせて開発を進め、それぞれの特性や用途にあわせてシステムを組み合わせた総合ソリューションを提供する。また、同社ではリモートで作業を支援するスマートグラス「Remote Action」も開発しており、ドローンと組み合わせて使用することも考えられそうだ。
ドローンを展示していたブースはいずれも盛況で、来場者からの質問も活用を前提とした具体的なものが多いように見えた。それに対してメーカー側はまだ適切な機体やサービスを準備中という感じで、年内はレンタルでのテスト運用や実証実験レベルで利用例を増やし、本格的なビジネスになるのは来年以降となりそうだ。