11月4日、岐阜県大垣市で開催されたイベントにおいて、飛行中のドローンががバランスを崩して落下し、下にいた観客をを負傷させるという事故が発生しました。この事故をきっかけに、国土交通省でも再発防止を目的とした取り組みが進んでいます。例えば、今まで包括申請として対象となっていた「催し場所上空の飛行」が包括申請では対象外となり、都度申請が必要となりました。
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弊社でも12月に催し場所上空での撮影案件があり、まさに申請の最中です。今回は大垣市での事故後、催し場所上空での飛行についての申請がどのような基準・状況なのか、レポートしたいと思います。
今まで通りの申請をしてみたら…
弊社が予定しているイベントは、とある海岸沿いの道を走るチャリティランナーを海側から空撮(静止画・動画)するというものです。機体下方に無人地帯(飛行高度と同じ半径の円内に第三者を立ち入れない)を保ちながら上空へ上がる飛行計画を作成いたしました。最大140mまでの高度を飛行する予定ですが、その際の一般ランナーまでの距離は140m以上を想定しています。機体はPhantom4 PROです。
それらを申請書にまとめ、国土交通省東京航空局へ申請した結果、届いた修正依頼は下記のものでした。
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国土交通省からの修正依頼
催し場所上空等において人又は物件の近くで無人航空機を飛行させる場合には、講ずべき安全対策の妥当性を十分に検証する必要があると考えています。つきましては、以下の4つの項目について空白部分への追記又は追加資料の添付等により、具体的な安全対策を提示願います。
例)第三者を保護するネットの設置、ケーブルによる無人航空機の係留等
※第三者を保護するネットの設置する安全対策を講じる場合はネットの設置位置及び設置されるネットの高さを明記してください。
※ケーブルによる無人航空機の係留安全対策を講じる場合はケーブルの長さ及びケーブルは地上とどのような方法で係留されるのかを明記してください。
の3点についてはすぐに記載できたので問題なかったのですが、問題は
・第三者への安全を確保する対策例)第三者を保護するネットの設置、ケーブルによる無人航空機の係留等
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についてです。ランナーが走る海岸沿いの道と離着陸場所となる浜辺の間にはガードレールがあり、ランナーは浜辺側には入ってこないということ、離陸後は海側に無人地帯を保ちながら飛行、上昇するということを安全な運用体制として強調してみたのですが、国土交通省としてはあくまでも物理的な対策を求めている…ということでした。
飛行計画の練り直し
ランナーが走っている風景を撮影するという案件なので、走行ルートにネットを設置するという選択肢はありませんでした。したがって、何らかのカタチで機体にケーブルを接続して係留するしかないと考えました。
ただ、一般的なワイヤー等では、機体の動きによってはワイヤーにたるみができ、かえって機体の動きを不安定にさせてしまいます。そこで今回は、ワイヤーの自動巻き取り機能を備えた「ドローンスパイダー(株式会社空撮技研)」を手配しました。この装置は、常に一定のテンションで機体をつなぎとめることができ、万が一機体が暴走を始めた際にはワイヤーリードのブレーキを掛けることで事故を未然に防ぐことができます。また、自動巻き取りスピードも12.5m/sというスピードに対応しているため、Phantom4 PROレベルの機体(Pモードのカタログ値で最高速度約13.9m/s)であればある程度自由にフライトすることができます。
上記に伴い、飛行ルートも変更いたしました。当初は約800mの幅がある浜辺の中央から突き出た防波堤(のようなもの)を離着陸場所とし、左右に移動しながら浜辺全体の撮影をカバーする予定でしたが、左端・中央・右端の3箇所に離着陸場所を設定し、そこからドローンスパイダーで係留した機体を無人地帯を保持したままフライトさせるという計画に変更。もちろん、最大飛行高度は離着陸場所からランナーまでの距離未満を条件としています。
催し場所上空での飛行の今後
現在、国土交通省では今まで「適切な距離を保つこと」としていた催し場所での飛行について、年内中に第三者からの距離を具体的に定める方向で検討しています。それまでは今回のような4点の安全基準を重視した審査が行われると思われます。これらは必要な対策であり、過去に包括申請で催し場所上空の飛行の許可を得ている方も、この点について対策の上で飛行計画を作成していただければと思います。ドローンはどれだけ安全対策をしても墜落するリスクをゼロにすることはできません。そのことを忘れずに、みなさんもぜひ安全にドローンを活用していただければ幸いです。