3年間でJUIDA認定スクールは100校に迫る発展
JUIDA(一般社団法人日本UAS産業振興協議会)は、2017年7月で発足3周年を迎えた。これを記念して7月10日(月)に、東京都中央区にあるコングレスクエア日本橋で「JUIDA創立3周年記念セミナー」を開催。ゲストスピーカーとしてドローンを所管する経済産業省と国土交通省の担当官を招き、行政の立場で日本の最新ドローン事情とそのこれからについて解説した。
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セミナーの冒頭にはJUIDAの鈴木真二理事長が、この3年間のJUIDAの活動を振り返った。2014年7月に日本のドローン産業・市場の発展を支援する非営利団体として発足したJUIDAは、発足3年で会員数2400を超え、JUIDA認定スクールも全国に100校に迫るなど、大きな発展を遂げてきた。
2016年3月には千葉県の幕張メッセで日本初の無人航空機を扱った国際展示会「Japan Drone 2016」を初めて開き、今年3月にはその2回目となる「Japan Drone 2017」を開催するなど、日本のドローン産業の中心的な存在となっている。また、2016年には海外との連携を進め、ISOをはじめ世界各国のUAS団体の会合に参加するなど、国際交流も積極的に行っているという。
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ドローンユーザーの立場から見ると、JUIDAはドローンスクールを統括する団体として知られている。今年4月には国土交通省航空局のホームページに、傘下の講習団体を管理する団体として掲載された。そんなJUIDAが認定するドローンスクールは5月初旬時点で79を数え、その後も全国で続々と認定スクールが開校している。
このスクール事業が始まった当初は、スクールの開校が東京、大阪、名古屋といった大都市圏に偏っていたが、最近は地方での需要の高まりを受けて、地方での新規スクールの開校が増えているという。そして、こうしたスクールで操縦技能証明が付与される形で“卒業”した受講生はすでに1,830人に上っている。
補助者なしの目視外飛行と第三者上空飛行の実現を目指す経産省
経済産業省 製造産業局 産業機械課 ロボット政策室 課長補佐 牛嶋裕之氏
日本のドローン産業を支え、振興する立場として講演したのは、経済産業省製造産業局産業機械課ロボット政策室の課長補佐でありドローン担当の牛嶋裕之氏だ。ドローンは測量やインフラ点検など、産業に使われる機械であり、将来的には自律的に飛行するロボットだということで、同省のロボット政策室で担当しているという。
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2016年は世界で約2,700億円、日本でも約200億円の市場規模だというドローン産業。2020年にはそれぞれ7,300億円超、日本市場でも1138億円への伸びが見込まれ、とりわけ日本の1,138億円という市場規模の78%は、実は機体のようなハードではなくサービスが占めることになると予測されている。
人口減少が確定的な日本社会において、いかにロボットという自動化ツールを使って生産性を向上できるかが重要になってくる。2013年秋から経済産業省では「ロボット革命実現会議」を開いているが、そこでまとめられた「ロボット新戦略」でも、ロボットのハードだけでなく利活用の産業を伸ばしていくことを推進している。“空飛ぶロボット”であるドローンもまさに同じことが言えると牛嶋氏は話す。
一方、2015年11月に開かれた第2回「未来投資に向けた官民対話」で、安倍総理が“3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す”と発言。これを受けて、経産省では同12月に「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を設置した。この安倍総理が発した3年という期限から、2018年11月にはドローンを使った荷物配送を実現させなければいけないという。
そのため、2016年4月には「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」を策定。その中でもハイライトと言えるのが「2018年に離島や山間部の無人地帯での目視外飛行を実現すること(レベル3)」と「2020年代にそれを都市部に拡大して有人地帯での目視外飛行を実現する(レベル4)」ことにある。
今年5月には、最初のロードマップ策定から1年が経ったことを受けてこれを改定。そのポイントの一つ目は、目視外飛行を単に操縦者だけでなく、補助者を不要とすることだ。やはり長距離を飛行する荷物配送において、補助者を付けるのはコストが膨らみ現実的ではないためである。そしてもう一つの追加点は “第三者上空”という概念である。国際的な議論の中では有人地帯、無人地帯という区別ではなく、第三者上空という概念が主流になっていることがその理由の一つだという。
さらにこの目標の修正に合わせて、求められる技術開発や環境整備も追加されている。技術開発では、目視外飛行のために人間が目視によって果たしていた機能を技術的に代替するにはどうしたらいいかということと、さらに第三者上空を飛行するにあたって、第三者への安全性への確保を挙げている。
とくに第三者への安全性は、ドローンが第三者に衝突したり落ちたりしない信頼性の確保と、万が一墜落した場合にいかに第三者の被害を抑制するかということが大事だ。そのために、運航管理、衝突回避技術がキモであり、経産省も予算の支援をしていくという。もうひとつの環境整備については、目視外飛行をする機体にはどういった性能が求められるか、どういった手順で飛行させるのかといった基準を明確化するべく、この7月から経産省と国交省で合同検討会を立ち上げて検討を進めていくという。
こうしたロードマップに沿った動きに対して、経産省ではドローンの性能評価基準の策定と、運航管理・衝突回避という大きく2つの技術開発に対してサポートを行っている。一つ目の性能評価基準は、ドローンの機体がどういった性能を有しているか、さらにその性能を計る共通の“物差し”となる。経産省としては、これをインフラ点検、災害対応、物流といった個別のジャンルではなく、目視外飛行や第三者上空飛行に共通する課題を解決する基準として捉えているという。
もう一つは、ドローンの運航管理と衝突回避の技術そのものの開発だ。将来的にレベル4が実現すると、特定の空域を複数のドローンが飛行することになり、そのために運航管理システムやドローンの衝突回避技術の開発が必要だ。これを福島県南相馬市に設ける福島ロボットテストフィールドで開発していく予定だ。経産省では今年度からNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとして措置された33億円の内、UTM関係で17億円を採択した。
このUTMについては、アメリカや欧州を始め世界にさまざまなUTMのプロジェクトがあるが、それらとどう調整を計るかも研究を進めていくという。その一環として来年3月に開催される「Japan Drone 2018」の中で、インターナショナルUTMセミナーを開催する予定し、日本のUTMプロジェクトの国際連携のキックオフとしたいと牛嶋氏は説明した。
牛嶋氏の所属する経産省製造産業局は、モノづくり産業を振興する施策を行う部署である。ドローンも産業機械の飛行ロボットとして捉えていて、“国産”が台頭してほしいという業界の声を受け、国産ドローンメーカーの振興を図る必要性は強く感じているという。しかし、ロボットが自動車産業によって育まれてきたように、ドローンもそれを利活用する市場の拡大があってこそ開発が促進すると牛嶋氏。製造産業局という立場からも、この利活用をもっと進めていきたいと最後に締めくくった。
ドローンと航空機の衝突防止策は情報共有とルール作り
国土交通省 航空局安全部安全企画課無人航空機企画調整官 甲斐健太郎氏
もう一人のゲストスピーカーは、国土交通省航空局安全部安全企画課無人航空機企画調整官の甲斐健太郎氏。2015年12月の航空法改正に関わり、現在もドローンに関わる航空法の今後についても考える中心的な人物だ。
2015年12月に改正航空法が施行され、無人航空機に関する飛行の空域や方法が定められてからすでに1年半が経過。今年4月には許可承認の申請先が、国交省本省から東京と大阪の航空局に移管された。この申請は2016年までは1ヶ月に平均で約1000件だったものが、今年に入ってから急増し、現在は月平均で約1500件と1.5倍に増えているという。1、2、3月は申請先の移管前の駆け込みだが、今年度に入ってから前年比1.5倍で推移しているのは、申請内容を見る限りその理由はわからないと甲斐氏は語る。
申請内容はやはりDID(人口集中地域)と30m以内の飛行承認が多く、次いで多いのが夜間と目視外だ。やはり都市部でドローンを飛ばしたいという需要が高く、おのずとそのためにはDIDと30m以内の申請が増えることになる。また、目的別申請状況を見るとやはりその4割が空撮で、その次の多いのが測量、インフラ点検・保守と続く。最近は特に測量とインフラ点検の申請が増えているという。
ドローンの形式別では、その上位をすべてDJI製の機体が占めていて、Phantom3がトップとなっている。最近はPhantom4の申請が増えていて、まもなくPhantom3と1位の座が入れ替わるのは時間の問題だろう。ホビーユースで人気の高いMAVIC PROや、先ごろ発売されたSPARKはPhantomシリーズほどの伸びはないという。
さて、こうした申請の急増と共に増えているのが事故の報告だ。無人航空機による事故が発生した場合には、今後の制度の検討を行う上で参考になるため、航空局では法令違反の有無に関わらず報告を求めている。幸い、現時点では人が亡くなったり、公共機関に影響を及ぼすような大事故は報告されていない。その一方で、第三者の物件を損傷したり、航空機とのニアミス、さらには河原で火災を発生させるといった事例は、今年3月までに67件が報告されいる。
今年2月に神奈川県藤沢市の工事現場で、墜落したドローンが現場の工事作業員の顔に切り傷を与えたことは、改正航空法施行後の人身事故としてセンセーショナルに報道され話題となった。3月には京都市伏見区の宇治川河川敷で、ラジコンヘリが墜落したことが原因で河原の葦など23ヘクタールを焼く火事となった。こうした墜落が原因による火事は神奈川県でも発生している。いずれも大きな事故とはなっていないが、今後、人に衝突したり、公共機関に影響を及ぼすような事故が起こると、これまでいい形で利活用が進んできたドローンの発展に水を差すことにもなりかねない。今後も事故がないように、安全第一の飛行を甲斐氏は求めた。
改正航空法の施行から1年半のなかで、ドローンを取り巻く環境や状況はどんどん変わっていっている。その中でさらなる安全確保のために国交省航空局の取り組みとして、2016年7月には「小型無人機のさらなる安全確保に向けた制度設計の方向性」を取りまとめた。基本的には改正航空法をベースに、2018年の離島・山間部における荷物配送を実現するために、目視外飛行で補助者を必要としない制度や、2020年の都市部における荷物配送のために、機体の認証制度や操縦者の資格制度について整備をするというのがハイライトだ。
ただ、この機体の認証制度や操縦者の資格制度については、ドローンの技術開発が日進月歩で行われる中、あまり法律をガッチリと固めてしまっても、すぐにドローンの進化によってそれが陳腐化してしまうので、今後の技術開発に沿って段階的に実施していくというのが、航空局の考え方だと甲斐氏は語る。
ただ、レベル4の都市部における荷物配送については、都市部を飛んでも問題ない滞空性能や風に耐えられるような技術が必要だ。しかし、現在の機体の技術レベルだと、やはり墜落の可能性は否定できない。そのため国交省では経産省やメーカーとも連携して機体の向上性能を図り、“落ちないような機体”“落ちても安全な機体”が登場したところで、都市部の荷物輸送のための飛行させるにあたっては、その機体の認証や操縦者の資格制度を設ける考えを説明した。
また、いま航空局が課題としているのが、無人航空機と(有人)航空機との調和だ。先の事故の例にもあるように、ヘリ側から無人航空機が見えるほどの距離のニアミスがすでに発生している。特にドクターヘリをはじめとするヘリコプターは、空港ではない場外離着陸場のような場所にも離発着を行うため、ドローンとの衝突回避ルールが急務だという。昨年11月に国交省で検討会を立ち上げて安全確保の方法の検討を始め、今年3月30日には中間とりまとめを発表している。
この衝突回避の対策は、無人航空機と航空機の間で飛行情報を共有することと、衝突回避のルールを定めることにある。情報の共有については、ヘリコプターの飛行情報を共有する精度がないこともあって、残念ながらすぐに対策することはできないという。そのため、まずは衝突回避のルールを定めること先決だ。無人航空機と航空機では当然有人の航空機が優先であり、無人機側が有人機を認めた場合は、すぐに機を降ろすなどの回避行動をとらなければならない。
他方、無人航空機同士の衝突回避策も必要になってくる。特に今後は災害時に無人航空機が多数飛ぶようになることも考えられるため、無人航空機同士の飛行情報を共有できるシステムを作っていくことを航空局では検討している。また、無人航空機の飛行前や飛行中は、飛行させる者同士が調整し、衝突を回避する必要があると甲斐氏は語る。そしてこうしたルールは、現在行っているガイドラインの改正の中で、飛行の許可申請の審査要領に盛り込んでいくという。
こうした安全対策については、すでに航空局の2017年度予算で措置が行われている。そのひとつは無人航空機の飛行情報を専用のWebサイトに入力することで共有できるシステムの開発だ。また、飛行制限空域をGPS搭載の無人航空機のジオフェンス機能を利用して、許可承認と紐付けるといった対策を行うという。さらに、こうした許可承認の審査・監督の強化と同時に、簡素化のためのシステム化も航空局では検討している。
最後に甲斐氏は、今年4月から始まった無人航空機の講習会活用制度について説明した。ご存じのとおり、この制度は国交省に申請のあったドローンの操縦技能に関する講習を行う団体やスクールについて、航空局のHPに掲載したスクールを受講した人は、許可承認で操縦者技能確認書類(様式3)の提出を省略でいるというものだ。6月1日に掲載されたのは、4つの管理団体と43の講習団体となっている。
甲斐氏によるとその後も続々と申請が上がってきていて審査待ちという状況だそうで、今後もこのHP掲載団体はどんどん増えていくことになるだろうと締めくくった。