ジャーナリズムにドローンを用いる動きは、まだ新しいコンセプトではあるが急速に発展している。今まで撮影不可能だったような映像を得られるため、いずれ記者の必需品となることは間違いない。実際にSXSW2015などの各方面のカンファレンスでもドローンジャーナリズムについて、最近は見かけるようになったのは事実だ。
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また既にアメリカの大学ではドローンをジャーナリズムに用いる二つのプログラムが存在する。ネブラスカ大学リンカーン校にてジャーナリズムとマスコミュニケーションを専門とするMatt Waite教授が2011年11月に設立した「The Drone Journalism Lab」と、ミズーリ大学の「Drone Journalism Program」である。
ポーランドの活動家が2011年2月にUAV(無人航空機)を用いてワルシャワのデモを警察の前線を越えて撮影したことをきっかけに、ドローンはジャーナリズム界にも参入を果たした。ドローンを用いたことで、今までのデモ報道では見たこともなかった写真を撮影することができ、同画像らは口コミで世界中に広まった。
また映像を撮影するだけでなく、ドローンに積まれたセンサーを用いて群衆に関するデータや環境への影響も測定することができる。
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このように、無人航空機が持つポテンシャルは非常に大きい。戦場を飛び交いながら現状を正確に報道したり、汚染された湖の上を飛行し必要なデータを瞬時に送信したり、今まで想像し得なかったようなことが可能となった。多くの人は国民全員がこうした情報にアクセスする権利があると考えている。「Professional Society of Drone Journalists(ドローンジャーナリストの専門団体、PSDJ)」はまさにこれを体現している例である。彼らは来るドローンジャーナリズムの時代に向けて、倫理的・教育的・技術的フレームワークを築くことを目標としている。彼らは倫理規定を以下の図で表している。

この図が示すように、newsworthiness(ニュースに値するか否か)を最も重要な倫理規定として位置づけている。PSDJは「危険をもたらしかねない飛行物体を扱うだけに、その調査活動が記事の執筆に必須であるかを見極める必要がある」と言う。
同倫理規定は、特にゴシップ等の大衆向けの報道にドローンが使われることに釘を刺している。ドローンを使えば、パパラッチ雑誌等が大金を出すようなハリウッドの「Aリスト」に載るような写真も素早く、そして秘密裏に撮影することができる。ドローンの悪質利用に関する罰金はまだ少額なため、リスクも小さい。これに対し、Waite教授は「パパラッチは既にヘリコプターやその他乗り物を使いこなして写真撮影している。これ以上プライバシーを侵害することなどできないのでは?」と首をかしげる。
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「法と公共空間の尊厳」は倫理上重視されてはいるものの、ジャーナリストがThe Fourth Estate(第四階級)の一員として国民に重要な情報をとどける際にドローンを用いるような場合は、国民の知る権利が優先される。PSDJは「ジャーナリストが空を使えないとなれば、国民の知る権利が阻害される」と考えている。
世界的にもドローンの商用利用は法律の元、許可されている範囲では、認められている。しかし、ジャーナリズムへの利用となると不法侵入、公的不法妨害やプライバシー等に関する問題が浮上し、航空機産業に支障が出る可能性もある。またドローンのパイロットは常に航空機を目視できる距離にいる必要があり、高度や速度についても規制がある。日本はどうだろうか?まだ確固たる法規制やルールを準備する段階である。なんとも悩ましい状況ではある。
ドローンをジャーナリズムに利用する動きは既に大きな社会的インパクトを与えており、我々が無人航空機への理解を深めるに連れて更に広まっていくだろう。今まで得ることのできなかったような情報は、表現をより自由にするポテンシャルを持っている。
このポテンシャルを活かすも殺すも、今後ドローンがいかにして我々の生活に溶け込むかにかかっているように感じる。