1960年代に活躍した海軍のジャイロダインQH-50 DASH。アメリカのドローン(無人航空機)の歴史は軍用も含めると古い
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海軍空母の横で開催される「Drones:Is the Sky the Limit?」展
無人航空機(UAV)と呼ばれるパイロット不要の航空機を取り扱う、史上初の大規模博物館展「Drones:Is the Sky the Limit?」がニューヨーク「イントレピッド海上・航空・宇宙博物館」で2017年5月10日より開幕中だ。この大がかりな展示会は、博物館の86埠頭にある6,000平方フィートのカスタムされたパビリオンで開かれており、第一次世界大戦にさかのぼる無人機の起源や軍事開発から、現代の複雑な人道的・商業的課題を解決するという用途まで、ドローン技術の歴史を探り、まさにドローンを俯瞰できる。展覧会は2017年12月3日まで開かれる予定。キュレーションされた博物館的な展示は世界初ではないだろうか?
Drones:Is the Sky the Limit?では、ドローンや、インタラクティブな体験、歴史的遺物、模型飛行機、貴重な映像資料、VRインスタレーションなどを展示し、観客はそれらを介して無人機技術を21世紀以降の先進的システムに取り入れようとする初期の試みを探求していくのが狙いだ。
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レディー・ガガがデザインした空飛ぶドレス”Volantis”も初一般公開
展示会では、無人航空機の技術と用途に関連した大小さまざまな規模の展示品が公開され、中には軍事用飛行機や商用飛行機も含まれる。今回の目玉の一つは、歌手のレディー・ガガがデザインした世界初の“空飛ぶドレス”「Volantis」(一般公開は初となる)で、レディー・ガガの技術開発部門「Haus of Gaga(TechHaus)」と「Studio XO」との共同制作となる。
Amazon Prime Air初号機
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また、ネット通販の宅配用に設計されたAmazonの貨物自動車のプロトタイプや、飛行機コンセプトの実寸大モデルといった、将来の個人向け自律輸送システムにもなりうる人間乗車型の乗り物にも注目が集まる。
人が乗れるドローンAAV(Autonomous Aerial Vehicle:自律飛行機)EHANG184のモック
訪問者は実際にドローンを飛ばし、臨場感あふれる一人称視点でドローンレースを体験し、警察や消防署でのドローンの用途を探り、ドローン技術が写真家、芸術家、映画制作者、舞台芸術へもたらす新しい視点について学ぶことが可能。さらにインフラ、農業、気象学といった産業への影響や、環境保全と人道的努力への貢献、空飛ぶ自動車から宇宙探査まで、ドローンのもたらす未来について学び、考えるきっかけを与えてくれる。
シュミレーターでは、FPVでドローンの飛行体験ができる。かなりの確率で酔う
さらに同展覧会では、記録写真や近代に撮影された写真、ドローン技術の未来が垣間見えるアーティスト作品、ドローンの視点で撮影した独特なイメージを体験する「没入型」シアターも展示される。イントレピッド海上・航空・宇宙博物館のスーザン・マレノフ・ズウスナー代表は次のようにコメントしている。
ズウスナー代表:ここ数十年にわたる無人航空機の進歩は本当に驚くべきものです。この展覧会では、野生生物の保護や宇宙探査から芸術的表現や日常生活に至るまで、無数の人間の努力に対するドローンの広範な影響を紹介します。Drones:Is the Sky the Limit?展は、私たちのこれまでの功績や、この技術が未来をどのように形作るかなど、訪れる人々に素晴らしい識見を提供してくれるのです。
展示会共同キュレーターのメアリー・L・“ミッシー”・カミングス博士は次のようにコメントしている。
カミングス博士:1903年、ライト兄弟によるキティホークでの初めての飛行で、人々は空を鳥と共有するという考えに魅了されました。それから100年余りのうちに無人航空機を利用し、ライト兄弟が想像もしなかったような方法で人間を助けていくことで、私たちはこの航空と冒険の精神を取り戻しています。この展示会は新しい航空革命の黄金時代の姿を真に捉えています。訪れる人々は自律飛行の未来に驚かされ、興奮することでしょう。
イントレピッド海上・航空・宇宙博物館は、学生や教育者、一般の人々を対象に、成長するドローン技術とその論争的・理的な意味を探求する関連プログラムを提供する予定だ。プログラムではインタラクティブな対話や、ドローンの飛行実験、インスタレーション、ソーシャルゲームなどを取り入れるとしている。
Drones:Is the Sky the Limit?展は、イントレピッド海上航空宇宙博物館の航空キュレーターであるエリック・ボーム氏、そしてデューク大学とAutonometrics,LLCのメアリー・L・“ミッシー”・カミングス博士とアレクサンダー・J・スティンプソン博士によって、共同で管理されている。
カミングス氏は海軍初の女性戦闘機パイロットの1人で、1988年から1999年にかけて海軍に勤務していた。彼女は現在、Duke Roboticsと「Duke’s Humans and Autonomy Lab」のディレクターを務めている。スティンプソン博士は、デューク大学の機械工学と材料科学の学部に所属する研究者だ。どちらもAutonometricsのパートナーであり、自律システムとの人間のやりとり、特にドローンや飛行車両などの自律輸送システムの応用を専門としている。
イントレピッド艦内の1945年に撮影された写真に写っているターゲットドローン・デニー(通称TDD)は、ハリウッドとの意外な関係性を持っている。デニーは、サイレント映画時代に活躍し、後にトーキー映画でもベテラン俳優として親しまれた優雅なイギリス人男優、レジナルド・デニーにちなんで名付けられた。チャールズ・リンドバーグやアメリア・イアハートといった飛行士の功績に魅了された多くの人々がそうであったように、ダニーも模型飛行機の愛好家になっていった。彼はホビーショップを開き、模型飛行機やエンジンを製造する「Radioplane Company」を創設した。
「Drones:Is the Sky the Limit?」エントランスには世界初実用無人飛行機「ラジオプレーンOQ-2」が展示されている
1940年、デニーは軍用の標的ドローンとしてラジコン飛行機を生産する陸軍との契約を獲得した。ここで登場するのがロナルド・レーガンだ。「セルロイド・コマンドス」として知られる軍の映画部隊のキャプテンであり、デニーの友人であった彼は、カリフォルニア州カルバーシティのラジコン飛行機工場で戦争作業を行っている一般市民の写真を撮るため、軍からデイビット・コノヴァー二等兵を派遣した。
コノヴァー二等兵がそこでカメラを向けたのは、プロペラを持ち100万ドルの笑みを浮かべる19歳の組立員、ノーマ・ジーン・ドハティだった。彼は彼女の写真写りの良さを褒め、モデルの道を検討するべきだと彼女に言った。
後にマリリン・モンローとして知られるノーマ・ジーン・ドハティがOQ-2ラジオプレーンの組み立てに取り掛かる様子
展覧会の協力者には、バード大学ドローン研究センターの共同監督、アーサー・ホランド・ミシェルとダン・ゲッティンガーも迎える。彼らが率いる学際的研究機関では、軍事分野および民間分野において、ドローン技術がもたらした斬新かつ複雑な機会や挑戦に関して、独自の研究を行っている。
Drones:Is the Sky the Limit?展はDJI、アメリカ航空宇宙学会(IEEE)の多大なる支援のもと開催が可能となったものである。また同展覧会はニューヨーク州芸術院の公的資金によって一部援助されており、アンドリュー・クオモ知事とニューヨーク州議会の支援を受けている。軍事に始まりコマーシャル、コンシューマとドローンを全方位に見渡せる展示会となっている。ニューヨークに立ち寄る機会があればDrones:Is the Sky the Limit?展に足を運んでみてはいかがだろうか?