背景と目的
水稲栽培において倒伏は収量や品質の低下を招くため、生育状況の正確な把握と適切な栽培管理が必要とされる。しかし、従来の方法ではほ場全体を面的に把握することは困難だったという。近年のドローン技術と高精度な位置情報の活用により、三次元構造の正確な復元が可能となったため、この技術を利用した倒伏リスク予測を検討した。
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ドローン撮影で得られる3次元モデル(DSM)
ドローンの空撮では撮影画像と位置情報を得ることが可能であり、このデータをもとに撮影対象を三次元的に構成したモデルをデジタル・サーフェスモデル(DSM)と呼ぶ。このモデルを利用することで地形などの高さ情報を取得することが可能。
DSMを作成するためのドローン空撮では、通常の飛行に加えてカメラに20°の角度を付けたアングルで画像を取得。撮影時に角度を付けることで対象を三次元的に再構成したDSMの作成が可能となり、このモデルから地形などの高さ情報も取得できる。
研究内容
草冠高の把握
ドローンの斜め往復撮影で得たデジタル・サーフェスモデル(DSM)を活用。生育中期以降のDSMから移植直後のDSMを差し引くことで草冠高を算出。実測の草丈より低い値となるが、生育傾向を反映。
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草冠高と倒伏リスクの関係
幼穂形成期の草冠高と成熟期の稈長には相関があり、草冠高65cm以上で稈長93cm以上となる傾向が確認された。草冠高65cm以上の場合、収穫期における倒伏程度が3.5以上となるリスクが高い。
導入効果
ほ場全体の生育状況から収穫期におけるコシヒカリの倒伏リスクを予測することで、栽培管理の適正化が図られる。
対象:大規模水稲生産法人や農業サービス提供企業
注意点
- 解析には地上解像度が3cm以下となる撮影条件を設定。高精度測位技術(RTK-GNSS)を利用した状態でカメラ角度を鉛直下向きより20°傾け往復撮影を行った可視画像を使用
- 画像処理はP社製画像処理ソフトを利用し、GISソフトのラスタ演算により草冠高を算出
- 穂肥は0~2.2kg/10a施用し、撮影は風のない条件で実施
まとめ
ドローンを用いてカメラ角度を20°傾けて往復撮影することで、ほ場全体の草冠高を把握可能。幼穂形成期の草冠高が65cm以上コシヒカリは、収穫期の倒伏リスクが高まるが、この技術により、ほ場全体の倒伏リスク把握による栽培管理の適正化が図られる。