この点検は、関東地方整備局 荒川下流河川事務所管内で、2024年1月に行った樋管函内水上ドローン点検の第2弾として実施され、建設現場の点検作業における高度化・省力化を目指して行われた。
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荒川下流河川事務所では、建設生産プロセスの変革による生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指してインフラ分野におけるデジタルデータと情報技術を活用したDXを推進している。今回は河川管理施設の点検作業の変容・変革に向けた取り組みとして、水上ドローンを活用した点検を行った。
背景と本点検の概要
樋管は堤防を横断する暗渠形式の水路構造物で、治水機能維持のため定期点検が義務付けられている。しかし、従来の点検は人がボートで樋管函内に進入して目視で行う必要があり、狭く暗い樋管函内での作業には危険が伴う上、そのような環境下での点検品質確保が課題となっていた。
そこで、八千代エンジニヤリングとJIWは、安全性の確保や作業省力化を目的に、2024年1月に樋管函内の水上ドローンを用いた点検を実施した。
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実施内容
水深が大きく、水上部の空間が狭い樋管函内の点検では、樋管の正面または正面側方にドローン操縦者と水上ドローンを配置し、水上ドローンを函体吐口部から内部に進入させて点検データを取得。
2024年1月に実施した動画撮影用のカメラとは別に、連続写真撮影が可能なカメラを搭載し、函体の側面・上面・正面および斜め上の撮影データを取得した。これをSfM処理により3Dテクスチャモデル化した。
結果と課題
樋管函内での水上ドローン点検とそのデータの3Dテクスチャモデル化により、以下の結果と課題が確認された。
結果
- 3Dテクスチャモデル化により、損傷の位置や規模の定量的把握が可能となった。
- モデルは樋管函内の損傷位置関係を正確に認識でき、隣接する損傷の関連性や要因の推定が期待できる。
- 以前は点検者が動画をすべて視聴して損傷評価を行う必要があり、損傷の種類や進行を見落とさないよう何度も確認する必要があったが、3Dモデルにより損傷部分を容易に抽出可能となり、作業負荷軽減が実現した。また、管理者や施工者などの関係者も簡単に確認できるため、工数省力化につながる。
- 点検データ取得時、動画撮影では1函体につき4画角(上面、両側面、正面)の撮影が必要で2往復が必要だったが、3Dモデル化を活用することで斜め上向き方向の連続写真(両側面/2画角)のSfM処理が可能になり、1往復で済むようになった。この結果、データ取得時間の短縮が期待できる。
今回の結果では、3Dテクスチャモデル化による高度化に加え、さらなる省力化が期待される結果が得られた。今後は、各建設現場に導入できるよう、異なる環境下でも対応可能な水上ドローンの自動・自律航行の精度向上、撮影手法の確立、AIや画像解析技術を活用した損傷抽出や継続監視を検討していく。
八千代エンジニヤリングとJIWは、建設現場の点検のさらなる高度化・省力化を推進するとしている。