本事業では、波長・周波数情報を拡張するセンサの社会実装に向けて、RF/AIS/IoTに関連する各種信号・データの受信、VDES送受信等の複数機能を有し、異種の衛星とも連携可能な多目的衛星コンステレーション群を構築することで、船舶動静や広域な海洋状況の把握による海上安全の向上や海洋DXの実現に寄与する。
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あわせて、上記に必要となる小型衛星の量産開発・量産体制構築などを通じて、安全保障、民生利用の両面からの商業用衛星コンステレーション事業基盤の確立を目指すとしている。
事業概要
名称 | 宇宙戦略基金「商業衛星コンステレーション構築加速化」事業 |
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技術開発課題 | 多目的衛星コンステレーション群の構築(多様な波長・周波数情報を拡張するセンサを搭載した衛星コンステレーションの構築) |
事業背景
近年、海洋の安全保障環境が厳しさを増すなか、宇宙を活用した日本及びシーレーン周辺海域における海洋状況把握(MDA)を行う能力の強化が必要になっている。
現状においても、船舶が自らの位置情報を発信する船舶自動識別装置(AIS)の信号から得られる船舶の位置情報を把握することは可能だが、AISを搭載する義務がある船舶は大型の外航船舶などに限られ、自主的に搭載する内航船舶を除いて漁船や小型船はAISによる位置情報の把握ができていない。
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さらに、AISの信号を停波して位置情報を把握されないようにして違法な取引を行うことや信号を偽装して位置情報を捏造することなども顕著化しており、安全な航行の実現や海洋における脅威、リスクの早期察知のためには、MDAの情報として十分な信頼性を満たしていないことが世界的に議論されている。
こうした中、様々な周波数帯の電磁波やIoTセンサーから発信されたデータの取得を通じた、AIS信号には依存しない海洋状況把握の手段に対して世界的に関心が高まっている。
また、現行のAISには、通信速度の低さ・片方向のみの通信・送信できる情報の制限(船舶識別IDや航行速度等に限定)などから、自由なデータ送信・アプリ利用等による海上業務効率化に活用できないなどの課題があった。
このような背景から、現行のAIS による情報交換を高度化・高速化し、衛星を用いた信号中継によって通信範囲を大幅に拡張することができる双方向デジタル通信システム(VDES)が構想された。
2019年11月のWRC(世界無線通信会議)では、海上におけるVDES信号の送受信に必要な周波数割当てが決定し、更に2022年2月にはITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)勧告M.2092-1において、VDESの主要な技術規格が既に定められている。
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また、現行AISはSOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)において大型商船等に搭載義務が課されているが、2028年頃の改正によりAISまたはVDESの選択式義務制に移行することが見込まれている。VDESの通信機能を活用することで、より確実な船舶情報の収集に貢献することも期待されるとしている。